ソーシャルワークから見た「地域福祉等を推進する民間組織への寄附」

05地域福祉の理論と方法

問題39 地域福祉等を推進する民間組織への寄附等に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 所轄庁の認定を受けた認定特定非営利活動法人に対して寄附した個人又は法人は、税制上の優遇措置を受けることができる。
2 共同募金によって集められた資金は、市町村、社会福祉事業・社会福祉を目的とする事業を経営する者などに配分されている。
3 社会福祉法人の公益事業における剰余金については、他の社会福祉法人が行っている社会福祉事業への寄附が認められている。
4 「社会福祉協議会活動実態調査等報告書2018」(全国社会福祉協議会)によれば、住民から会費を徴収している市町村社会福祉協議会は半数以下であった。
5 「令和元年度市民の社会貢献に関する実態調査」(内閣府)によれば、2018年(平成30年)に市民が寄附をした相手で最も多かったのは特定非営利活動法人であった。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より

 

この問題も、ここまでの問題構成の論理的な流れを踏まえれば、すぐ答えが導けるようなものですね。
問題36で地域福祉の推進において、地域住民と社会福祉事業者と社会福祉活動者の三者が主体なんだと確認し、問題37で地域生活課題として地域社会からの孤立を挙げ、問題38で制度には乗らないが日常生活や社会生活の支援を必要とする者を対象とするような方向性を指示したうえで、では、地域福祉を推進していくうえでどのような寄附制度がありうるか、と問われているのです。

であれば、選択肢1で決まりじゃないですか。

選択肢1 〇

NPOはたいてい財源上大変厳しいものです。大半のNPOは社会福祉事業をやっているより社会福祉活動をやっていると言ってもいいでしょうけれども、でもそんな社会福祉活動も地域福祉には不可欠だ、ということを問題36から問題38までで確認しているわけです。そんなNPOを応援したいという地域住民がいても、寄附が税制優遇されないのであれば寄附しずらいわけです。一方で、NPOは社会福祉法人に比べ設立が簡易ですので、NPOそのものに税金優遇してしまうと税金逃れに使われてしまいます。そこで、認定制度を設け、所轄庁に認められたNPOについては寄附について税制優遇しよう、というわけです。これは、社会福祉活動の主体であるNPOにとっても、地域福祉の主体である地域住民にとってもwinwinなわけで、地域福祉の推進によりよい制度といえるでしょう。
とすれば、このあたりの知識を知らなくても、〇以外にはありえません。

これで勝負あったなのですが、確認として、他の選択肢もざっと目を通しておきましょう。

選択肢2 ×

募金を市町村(=公)に配分するって発想はありえません。公には税金徴収権限があり、行政施策上、税金が足りないのであれば、立法府を通じて法律等を改訂し、税金の徴収率をUPするなど、税金で賄えばいいのです。
募金や寄附というのは、民間に対して行われます。なぜなら、資本主義社会において、民間はもうからなければ維持されませんが、もうからなくても必要なサービスをやっている団体があるわけですが、とはいえ、公がやれない・やらないものはあるわけです。その典型が宗教活動であり、それゆえ宗教団体には寄附に関して税制優遇されています。一方で、社会福祉も本来ならば公がやるべきところですが、地域福祉を典型として、公が仕切ってしまうのがまずい面もあるわけです。そういう部分については社会福祉であっても民に任されるわけですが、とはいえもうからないわけです。そこで、社会福祉団体に対して寄附がなされる、ということになるのです。

共同募金についての条文(=社会福祉法第112条も見てみましょうか。

その区域内において社会福祉事業、更生保護事業、その他社会福祉を目的とする事業を経営する者(国及び地方公共団体を除く。)に配分することを目的とする

選択肢3 ×

社会福祉法人は、非営利で、かつ、税制上も優遇されています。この税制優遇は、先に説明した「公がやるとまずいが、でももうからない」ようなことをやる社会福祉法人が維持されるための措置なわけです。ただ、そのような優遇をされているがゆえに、非営利であることが制度上は強く要請されていますし、もしその周辺の事業において多少もうかったとしても、そのお金(=余剰金)を自由に使うことに対しては制度上は制限が加えられるのは当然でしょう。ということで、余剰金は当該法人が行う社会福祉事業や公益事業に充てることになっています。まぁ、論理的に考えれば当然ですね。

選択肢4 ×

上述してきた寄附の背景を考えると、社会福祉協議会はその最たるもので、地域福祉というどうにもこうにもお金になりにくいものをする民間団体なわけですから、基本的には地域住民に会費を募って、団体を維持するという発想が前提にあります。ただ、公ではない以上、税金のように強制はできず、結果、会費は寄附のようなものであり、年々会費収入は減っています。ただ、減ってはいるものの、社会福祉協議会の立てつけは地域福祉をメインとする民間である以上、会費制度をやめるわけにはいかないのです。すると、会費制度を残している社会福祉協議会がほとんどになります。ただ、ここの選択肢を丁寧に読まなければならないのは、「会費を徴収している」と書いているのであって、「会費で団体運営をまかなっている」とは書いていません。制度はあるが、実態は、契約制度以後は積極的に社会福祉事業を行って団体を維持している、そのような感じなのです。

選択肢5 ×

これはちょっと迷った人もいるかもしれませんね。寄附に関しては圧倒的に、「共同募金会」という団体が多くなります。共同募金会については、別の機会に説明できれば。

正解 1

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