ソーシャルワークから見た「社会福祉法での地域福祉の推進」

05地域福祉の理論と方法

問題36 社会福祉法における地域福祉の推進に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉事業を経営する者は、地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。
2 社会福祉に関する活動を行う者は、地域福祉を推進する主体である市町村に協力しなければならないとされている。
3 地域住民等は、支援関係機関と連携して地域生活課題の解決を図るよう留意するとされている。
4 福祉サービスの利用者は、支援を受ける立場であることから、地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。
5 国及び地方公共団体は、地域住民等が取り組む地域生活課題の解決のための活動に関与しなければならないとされている。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より

 

社会福祉法の「地域福祉の推進」だけに絞った単独問題ですね。なぜここが国家試験で問われるか、その背景は知っておく必要があります。

<社会福祉法の歴史><
戦後直後=早急な戦後処理の必要性
1947年 児童福祉法
1949年 身体障害者福祉法
1950年 生活保護法
1951年 社会福祉事業法
⇒福祉三法体制の確立
↓ 影響
1960年代
福祉六法体制(措置中心の時代=行政による社会福祉)
↓ 転換
1990年代後半 社会福祉基礎構造改革
↓ 結果
2000年 社会福祉事業法→社会福祉法
・法の目的規定に「地域福祉の推進」を追加

社会福祉法に新しく盛り込まれた「地域福祉の推進」に絞った問題は、かつて選択肢の1つではありますが、こんな風に出題されています。

第25回問題41 地域のケアシステムに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1  2000(平成12) 年に改正された社会福祉法第4条において、市町村が地域福祉の推進に努めなければならない、と規定された。

社会福祉法第4条は、2000年に初めて法的に位置づけられた「地域福祉」という用語を理解するうえで大事な条文なので、確認しておきましょう。

社会福祉法第4条
地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない。
2 地域住民社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられるように、地域域福祉の推進に努めなければならない。
3 地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。
地域福祉を推進する主体
①地域住民 ②社会福祉を目的とする事業を経営する者 ③社会福祉に関する活動を行う者

ということで、地域福祉の推進の主体には行政は入っていませんので、第25回問題41の選択肢1は×になるわけです。

さて、地域福祉を推進する主体である、③「社会福祉に関する活動を行う者」は過去問で出ていますのでこれも確認しておきましょう。

第27回問題40 ボランティア活動に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
4  社会福祉法第4条にいう「社会福祉に関する活動を行う者」には、ボランティア等が想定されている。

「社会福祉を目的とする事業」と「社会福祉に関する活動」の違いは、厚労省のHPにまとめられています。要は、この二つは「社会福祉事業」として法律上に事業として列挙されたものではないものにあたるわけです。

社会福祉を目的とする事業:社会福祉事業とは別に事業として行われているもの
社会福祉に関する活動:そもそも事業とはされていないもの

事業という言葉は、仕事とかお金になるといった観点で考えがちですが、「継続性があるもの」ぐらいのとらえ方のほうがいいですね。ですから、事業とされていなものとは「継続性を前提としないもの」であり、その典型がボランティアですね。あとは住民団体とかそんなのも入ってきますかね。なので、第27回問題40の選択肢4は〇になるわけです。

これぐらい確認しておけば、社会福祉法の「地域福祉の推進」については大丈夫ですね。選択肢を1つ1つ確認していきましょう。

選択肢1 ×

地域福祉を推進する主体の3つは上述しましたが、「②社会福祉を目的とする事業を経営する者」とありますので、×ですね。

選択肢2 ×

地域福祉を推進する主体の3つに市町村は含まれていません。逆に、選択肢にある社会福祉に関する活動を行う者が地域福祉を推進する主体の1つなわけです。

選択肢3 〇

「地域住民等」とは、地域福祉を推進する主体としての①②③の総称になります。地域住民等の役割については、第3項に規定があり、この選択肢に書いてあることが書かれています。

選択肢4 ×

ちょっとトリッキーな問い方ですが、福祉サービスの利用者であっても当然「地域住民」ですから、地域福祉を推進する主体に含まれますね。こういう書き方をされると途端に頭を抱える人がいますが、論理的に考えれば当然です。

選択肢5 ×(×に近い△でもOK)

これは社会福祉法第6条の規定ですが、第6条まで知らないとしても、「地域住民等が取り組む地域生活課題の解決」と書いてある以上、それらは地域住民等が主体的にやることです。「関与」という言葉のニュアンスにひっかかってしまうかもしれませんが、それよりここで×にする根拠は「関与『しなければならない』」という義務としての表現のほうですね。地域住民等だけでできるものだってあるのであり、そこに絶対に関与しなければならないというのはおかしいわけです。実際、第6条に書いてあるのは、「国及び地方公共団体は…地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるように努めなければならない」という表現をしています。

正解 3

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