ソーシャルワークから見た「医療法等による地域医療構想」

10保健医療サービス
今回のポイント
問題のタイトルに込められた意味をしっかり押さえる
地域医療構想では、なぜ二次医療圏単位なのか、論理で押さえる

問題73 医療法等による地域医療構想に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 構想区域の設定については、三次医療圏を原則とする。
2 病床の必要量の推計については、慢性期病床は推計の対象外とされている。
3 医療需要の推計については、在宅医療は推計の対象外とされている。
4 都道府県は、構想区域等ごとに、診療に関する学識経験者の団体等(関係者)との協議の場を設けなければならない。
5 地域医療構想では、地域における病床の機能分化と連携の推進が目指される。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

「地域医療構想」については第31回問題44選択肢4で、「医療法」については第30回問題74で単独問題として、過去問3年以内で出題されています。

ちょっとどんな内容か、さらっと確認してみますか。

第30回問題74 医療法の内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 病院又は診療所の管理者は、入院時の治療計画の書面の作成及び交付を口頭での説明に代えることができる。
2  市町村は、地域における現在の医療提供体制の把握と将来の医療需要の推計を勘案し、地域医療構想を策定することができる。
3  病床機能報告制度に規定された病床の機能は、急性期機能、回復期機能、慢性期機能の三つである。
4  一般病床、療養病床を有する病院又は診療所の管理者は、2年に1度、病床機能を報告しなければならない。
⑤  病院、診療所又は助産所の管理者は、医療事故が発生した場合には、医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。

第31回問題44 医療と介護の最近の改革に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
4 地域医療構想は、医療計画と介護保険事業支援計画の内容を包含する構想である。
× 地域医療構想は「医療計画」の一部であり、「介護保険事業支援計画」は含まれていません。

過去問3年分ゆえ、さらっと目を通してみました。

ただ、この問題は「医療法等による地域医療構想」が問題のタイトル、つまり、国家試験問題作成者は、「ここに焦点を当てて、以下の5つの選択肢を解いてね」とメッセージを発しています。

地域医療構想、つまりは、病院に入院させて完結させるようなかつてのような医療体制ではなく、医療を受けつつも地域で完結させるような、そんな有り方を構想していこう、という方向づけを医療法等で行っているというわけですね。

この見方・考え方を前提に選択肢を見ていきましょう。ただし、二択ですから、明確な×の選択肢を3つ見つければ、それで勝負ありです。確実に×なものから選んでいきましょうか。

選択肢2 ×

先に確認した「病院に入院させて完結させるようなかつてのような医療体制」とは、慢性期病床が中心になるような、そんな有り方なわけですよね。

そこから脱却して、医療を受けつつも「地域」で生きていく、そんな構想における推計では、いかに慢性期病床を減らしていくか、ここが具体的かつ重要な課題になるわけです。つまり、慢性期病床の数を減らしていくことこそが最も重要な目標数値になるはずなのです。

だとしたら、慢性期病床の数値が必要量推計の対象外になるなどということは考えられません。

選択肢3 ×

医療を受けつつ地域で生きていけるようにするためには、慢性医療病床を減らすだけではなく、「在宅医療」を増やしていくこと、これも必要になるわけです。

「推計」とは、文字通り推定して計算する、ということです。
それを「地域医療構想」に引き付けて理解してみましょう。
「構想」とは未来を具体的に描くことです。だとするならば、未来を構想し具体的に実行するためには、必要量を見込まずに勝手に必要な物を減らすわけにはいきません。慢性期病床の必要量を推計したとして、必要なのに減らすわけにはいかないのです。必要な「慢性期病床」が推計され、それを減らしたいのであれば、それを補うだけの「在宅医療」の仕組みを作っていかなければならないのです。

地域医療へとシフトされせるためには、慢性医療病床を減らす必要がある。そのためには在宅医療制度で補う必要がある。そのためには、慢性医療病床も、在宅医療もどちらも必要量の推計を行いながら中長期的に調整していかなければなりません。

だから医療計画が必要なのです。

選択肢1 ×

そんな構想を具体的に実現するために、「どれぐらいの区域(圏域)でやっていくのが最も実効性があるか」ということが問いとして立ち現れるわけです。

それに対する今の答えが、医療でも社会福祉でも、「都道府県よりは小さく、市町村よりは大きい」という落としどころになっているわけです。

例えば、障害分野でいうところの「障害保健福祉圏域」という考え方も、都道府県より小さく市町村よりは大きい、そういう単位なわけです。

すると、この単位は医療の区域では何というのでした?

問題72で確認しましたね。第2次医療圏になります。

ということで、選択肢1~3が確実に×なので、必然的に答えは選択肢4と5になるわけですが、ざっと以下二つの選択肢を確認してみましょう。

選択肢4 〇に近い△

第2次医療圏単位でやっていくにしても、第2次医療圏に重なる行政はありません。すると、そこを仕切っていくなら、都道府県にやってもらうしかありません。

都道府県のキーワードは「広域的」というのも、問題72で確認しましたね。複数の市町村を股くようなプロジェクト、それを仕切るようなありかたにおいて、「広域的」というキーワードが使われたりするものなのです。

ただし、それは措置中心のころの、都道府県単位の病院が全部仕切っていたころと同じになってしまいかねません。そこで、「診療に関する学識経験者の団体等(関係者)との協議の場」を設けることを義務化し、第2次医療圏を場とした新たな構想を、都道府県と市町村がいっしょになりながらやっていく、そのような仕組みを作ろうとしているのです。

と考えれば、無理がないでしょ。

選択肢5 〇に近い△

そんなやり方で構想される「地域医療構想」では、地域における病床が慢性期病床も必要な分はちゃんと保持しつつ、地域中心の医療へと移行させる。そのためには、複数の市町村が連携し、それを都道府県が広域的にサポートしていく、そんな有りようの推進が目指ざされるわけでです。

と考えれば、無理がないでしょ。

正解 4と5

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