ソーシャルワークから見た「日本のがん対策」

10保健医療サービス
今回のポイント
国/県/市の役割分担におけるキーワードを押さえる
社会福祉士必須の職についてしっかり確認

問題72 日本のがん対策に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 都道府県は、がん対策基本法に基づき、がん対策推進基本計画を策定することが義務づけられている。
2 地域がん診療連携拠点病院では、患者や家族に対して、必要に応じて、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を含めた意思決定支援を提供できる体制の整備が行われている。
3 がん診療連携拠点病院では、相談支援を行う部門としてがん相談支援センターが設置されている。
4 地域がん診療連携拠点病院では、社会福祉士がキャンサーボードと呼ばれるカンファレンスを開催することが義務づけられている。
5 都道府県は、健康増進法に基づき、がん検診を実施することが義務づけられている。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

日本の死因の順位は、1981年から約40年、「がん」(悪性新生物)がずーっと1位です。(ちなみに、その前は、1951年から1980年まで40年間、脳血管疾患が1位でした。さらにそれ以前の1位は、結核です。)
「がん」に次ぐのが「心疾患」ですが、この二つの差は大きいですので、まだ当分は死因の1位は「がん」で続いていくことでしょう。

ということで、「がん」対策は保健医療施策の中でも重要な位置を占めます。だから、定期的に国家試験でも問われます。

もう一つ、この問題は二択になっています。国家試験の二択は難しいという人がいますが、逆に、二択は簡単だって、そういう発想で二択をこれからは眺めてください。なぜなら、一択なら×の選択肢を4つ見つけないといけませんが、二択なら×の選択肢を3つ見つければ、それで正解になるからです。

選択肢1 ×

措置中心の時代、つまり1990年代ぐらいまでは、なんでもかんでも国が決めて、都道府県と市町村は、国が決めたルールを順守する子分みたいな時代が長く続きました。

それが地域福祉を掲げ契約制度中心になる2000年前後から、国と都道府県と市町村が役割分担をして、地域福祉を具体的に実現していこう、という方針を打ち出しました。

そんな文脈で、国、県、市のキーワードを挙げると

21世紀の国/県/市の役割を示すキーワード
:「基本」的
例 基本計画 基本指針 基本方針
都道府県:「専門」的、「広域」的
市町村:「地域密着」的、「包括」的

ということで、「がん対策推進『基本』計画」といった段階で、「国レベルの計画だな」とすぐわからないとダメです。国レベルの行政を「政府」と言いますから、「がん対策推進基本計画」は「政府」が立てるのです。

選択肢4 ×

社会福祉士が必須の役職は、今のところは地域包括支援センターだけです。これだけしっかり覚えておけば、これはすぐ×をつけられるはずです。
それに、これは医療施策ですから、社会福祉士必須にするって考え方もちょっと考えにくいですよね。

選択肢5 ×

義務か努力義務かで悩んだ人、そこが問われているんじゃないですよ。

がん検診に限らず、こういった「検診」や、あと乳幼児健康診査などに代表される「健診」といったものは、特定の人だけじゃなく、対象となる全数でやるわけじゃないですか。すると、都道府県レベルじゃやれるわけがなくて、市町村レベルでやるしかないんです。

あきらかな×が3つ見つかった段階で、あとは残り2つが正解。

ね?
一択より二択のほうが簡単でしょう。

それに、社会福祉士や精神保健福祉士はあくまでソーシャルワークの資格であり、保健医療のスペシャリストになる資格ではないですから、保健医療の細かい制度を聞くわけないのです。

ですから、選択肢1,4,5はソーシャルワークとも通じる見方考え方だけで×がつけられるのです。

ということで、残りの二つは、保健医療の具体的な制度政策ですが、そこまでしっかり押さえることを、少なくともソーシャルワークの国家試験は求めていないのです。

選択肢2 〇に近い△

「整備が行われている」ということは、逆読みすれば、地域がん診療連携拠点病院では、「意思決定支援を提供できる体制の整備」が義務化されている、ということですね。

「地域がん診療連携拠点病院」なんて名前を見ただけで、そして、「がん」に関する診療の意思決定が重要であることを考えれば、そりゃ、「意思決定支援を提供できる体制の整備」は義務だろうなって思いませんか?

その程度で、〇に近い△で、この問題では十分です。

選択肢3 〇に近い△

これも、「設置されている」ということは、逆読みすれば、がん診断連携拠点病院では「ガン相談支援センター」の設置義務がある、ということですね。

「がん診療連携拠点病院」なんて名前を見ただけで、そりゃ、相談支援のセンターの設置を義務化するだろって思いませんか?

選択肢の3つが明確な×なので、以上二つが〇に近い△ぐらいで、〇にしてそれで正解です。

さて、この問題を解くのに必須の知識ではありませんが、できればこれぐらい整理しておきましょうか。

がん診療連携拠点病院
都道府県がん診療拠点病院三次保険医療圏
地域がん診療連携拠点病院二次保健医療圏
地域がん診療病院
=がん診療連携拠点病院がない二次保険医療圏に都道府県の推薦で国が指定
一次保健医療圏市町村 
二次保健医療圏複数の市町村
→「地域がん診療連携拠点病院」→なければ「地域がん診療病院」
三次保健医療圏都道府県の全域 
→「都道府県がん診療連携拠点病院」
正解 2と3
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