ソーシャルワークから見た「人の成長と老化」

01人体の構造と機能及び疾病
今回のポイント
生後すぐから老化までを一連の流れで捉えられるようにする
老齢期になぜ血圧上昇するかを理解する

問題1 人の成長と老化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。
1 生後2 か月では,寝返りが打てる。
2 思春期には,第一次性徴が出現する。
3 青年期の終わりは,身体の成長が最も著しい時期である。
4 20 歳頃には,生殖器系の成長が最も著しくなる。
5 老年期には,収縮期血圧が上昇する。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

問題1から問題7は「人体の構造と機能及び疾病」という科目名です。

ただ、この科目含め社会福祉士全19科目のすべてに共通するのは、「ソーシャルワークの見方・考え方を踏まえた」問題であり、ソーシャルワークの見方・考え方から正解が導かれるということ。ここは絶対に押さえておかなけれはなりません。

なので、この問題も、タイトルは「人の成長と老化」ではありますが、「『ソーシャルワークの見方を・考え方を踏まえた』人の成長と老化」と読み替えたうえで、5つの選択肢に接するのが大事なことです。

さて、この問題では、乳児期の様子についての選択肢1から、老齢期の選択肢5まで、並んでいます。つまり、選択肢の1から選択肢5までの流れが、生まれてから死ぬまでの生涯発達のプロセスの順番で並んでいるのです。それがわかりましたか?

「成長」と「老化」を分ける見方もありますが、人の生(ライフ)を支えるソーシャルワークでは、この二つを連続して捉えるのだ、というメッセージがこの問題から読みとれます。問題1という、150問題の最初の設問として、ソーシャルワークの基本的な見方をまずもって示しているのです。

選択肢1 ×

ソーシャルワークの見方・考え方は、マジョリティ(=多数派)からのズレを社会そのものが受け入れるような、そんな社会に変えていくことを目指します。だからこそ、社会を変えていくためにも、まずはマジョリティの有り様を知っておく必要があるのです。

この観点こそが、「発達段階」という、子どもから大人になる平均的な成長を覚えることがソーシャルワーカーに求められる由縁です。だからこそ発達段階」はソーシャルワーカーとして最低限は押さえておかないといけないのです。

ソーシャルワークにおいて、子どもの、特に赤ちゃんから幼児になるプロセスにおいて大事な観点は、母子未分離状態から「能動的に」自分で動けるようになることです。なぜなら、本人が自分のニーズを「能動的に」伝えることがソーシャルワークの発想ではとても大事だからです。ですから、赤ちゃんがどのようなプロセスを経て、母子未分離な「受動的」状態から「能動的に」(=自分の思いで)動けるようになるか、そこは整理しておきたいですね。

生後すぐから寝返りを打つまでのプロセス
①生後1か月から2か月赤ちゃんの首はブランブランです。そうであるがゆえに、母親は首を固定するように抱えながらおっぱいを与えます

②おっぱいを与える過程で、そんな母の顔にちょうど赤ちゃんの視点が合わさるようになり、赤ちゃんは母の顔を追うようになっていきます。

③そうやって母親の顔を目で追う中で首も動いて、結果として、首が鍛えられ生後3カ月ぐらいで首がすわるようになります。

④赤ちゃんは首がすわると、首を自由自在に動かして、能動的にお母さんの姿を目で追うことができるようになります。

⑤そんな首に引っ張られて、身体も動くようになり、生後4か月~7か月ごろから寝返りも打てるようになっていくのです。

首がすわる(=「能動的に」自分が見たいほうが見れる)までのプロセスを見てきましたが、このような形で、すべての発達は論理的に成り立っています。そんな見方をさえ押さえれば、青年期までの発達段階は論理的に整理して覚えられます。ソーシャルワークの見方・考え方を踏まえれば、このプロセスのどのあたりが国家試験で聞かれやすいか、なんて勘どころも、だんだん磨かれてくるのです。

選択肢2 ×

ジェンダー的な観点からのソーシャルワークも必要度を増しています。ですので、生物学的な性差とジェンダー的な性差がどのように作られているかについては当然ながらソーシャルワーカーとして知っておくべきです。

生物学的な「性差」
①生殖器に特化した分け方(=第一次性徴
②それ以外をも含みこむ分け方(=第二次性徴

この二つを分けて考えます。

①のように生殖器のみに特化して分ける分け方は、生まれてすぐから分けられる性差で、第一次性徴と呼ばれます。

一方、②のように生殖器のみならず、男性ホルモンや女性ホルモンの発生に伴い、身体の変化が10歳ごろから非常に激しく見られだす、その性差の現れを第二次性徴と呼びます。

選択肢3 ×

青年期は、明確に何歳から何歳かなどと言う形では定義できません。

エリクソンがいう発達段階論では、「大人と子どもをつなぐ間の時期」というのがその定義だからです。

では、大人と子どもをどこで分けますか?産業構造の変化に伴い、その境界の時期は社会的には大きく揺らいでいます。ただ、生物学的には第二次性徴の時期を終えること(=その結果として、生殖行為を行えるようになること)で、大人と子どもを分けるのが一般的です。

選択肢のいう「身体の成長」を何をもっていうかは明確ではありませんが、少なくとも第二次性徴を終えるということは、生物学的にはそこで「身体が完成された」大人とみられるということですから、青年期の終わりに「身体の成長が著しい」というのはどう考えてもおかしいことになります。

選択肢4 ×

選択肢2と選択肢3の説明を踏まえても、何をもって「生殖器系の成長」というかは明確ではありません。

ただ、20歳のころには身体は完成されたものとみなされるがゆえに、20歳を契機として社会的には「成人」ともよばれてきたように、このころに生殖器系の成長が最も著しい、ということは考えられません。この時期には身体はもう完成されていると見なすからです。選択肢2の解説にも書いたように、10歳から15歳ごろまでに見られる第二次性徴の時期にあたると考えるのが一般的でしょうね。

選択肢5 〇

選択肢1から選択肢4までは、赤ちゃんから成人になるまでのいわゆる発達段階論という考え方さえ知っていれば、論理的な思考によって確実に✕がつけられます。

しかし、この選択肢5は発達段階論の話から外れて、高齢者の特徴に関する「知識」(=知ってるか知らないかで決まる)寄りの文章です。

とはいえ、「高齢」という変化に伴い、血圧がどう変化するかについては、ソーシャルワーカーとして知っておかなければならない「知識」です。

ですから、これは問われてもしょうがない。高齢化に伴い血圧は上がるのです。

ただ、それがなぜなのか、そこを論理的に把握しておけば忘れにくいでしょう。なぜ、高齢になると血圧は上がるのですか?

高齢で血圧が上がるのはなぜ?
加齢する
血管の弾力性がなくなり、老廃物も血管に付着しやすくなる
血の流れが悪くなる
心臓は全身に血液を送り出すために、力強く血液を押し出さざるをえない
→血圧が上がる

正解 5

 

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