ソーシャルワークから見た「医療保険制度の保険者と被保険者」

10保健医療サービス
今回のポイント
医療費の分担に関する日本の制度の大枠を理解する
医療保険に関する職域保険と非職域保険の違いと種類を整理する

問題70 医療保険制度における保険者とその被保険者に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 健康保険の保険者には、全国健康保険協会が含まれる。
2 船員保険の保険者は、健康保険組合である。
3 日雇特例被保険者の保険の保険者は、国民健康保険組合である。
4 国民健康保険の被保険者には、国家公務員共済組合の組合員が含まれる。
5 後期高齢者医療制度の被保険者は、75歳以上の者に限られる。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

この問題から7問連続で「保健医療サービス」になります。

旧カリキュラムにはなかった「保健医療サービス」が新カリキュラムから加わったのは約10年ほど前からです。

もともと「保健医療」と「社会福祉」は同じ厚生労働省管轄ではありつつも、全く別の領域という発想によって、制度もはっきり分かれていました

しかし、2000年前後から地域福祉へのかじを切ったことによって、地域という場で生きていくために、社会福祉も保健医療も、どちらも必要とする人がたくさんいるなかで、さらにいうと、保健医療もサービス化していくなかで、ソーシャルワーカーが保健医療サービスについて理解していなくてよいような理由は何一つなくなりました。

そんな保健医療サービスですが、保健医療サービスの中核にあるのが医療保険制度です。

保健医療制度は、科目「社会保障」とも重なりますが、国家試験でみると、どちらかの科目で必ず出題されるとみて間違いありません。である以上は、保健医療制度はしっかり整理しておく必要があります。

今回の問題は、医療保険制度の加入制度の5つ(健康保険/国民健康保険/後期高齢者医療/船員保険/共済組合)を、保険者・被保険者の枠組みで、それぞれ対比してしっかり押さえているか、そこが問われいます。

このような制度を越境した対比は、科目「社会保障」のほうで出やすいのですが、今回は科目「保健医療サービス」で出題されています。

そもそも医療費はどのように分担されていますか
まず自己負担があります。
ただ医療費は大変高いので、日本では多くの部分を「公的な」制度で埋めているわけです。
敢えて「公的な」と書きましたが、アメリカなど民間保険でその大半を埋めている国もありますので、その多くを「公的な」制度で埋めているのが日本の特徴と言えるわけです。
※もちろん、日本でも「がん保険」といった民間の保険もありますが、大半は公的な制度で埋められているのが実態です。

じゃあ、日本はどのような公的な制度で埋めているか?ということがわかっているかどうか、そこが国家試験では聞かれるわけです。ここに日本の特徴があるのですから聞かれて当然です。

医療費用に関して、自己負担以外を埋める日本の公的な制度は、ざっくり大きく分けて3つです。

医療費の自己負担以外を埋める公的制度
〇医療保険(=社会保険方式)
〇後期高齢者医療(75歳以上は強制加入)
〇公費負担

ざっくりいえば。
主に75歳未満であれば、医療保険で埋めて、75歳以上であれば後期高齢者医療制度で埋める。
それで足りない部分や、制度的に補う必要がある部分(生活保護世帯や障害者等への特別な医療補助)は、公費で補う、という発想ですね。

今回は、公費負担部分を除く、医療保険と後期高齢者医療制度の部分が狙われているわけです。

ここまで整理したうえで。

では主に65歳以下の人が対象となる医療保険制度についてざっと整理しましょう。医療保険の制度は、サラリーマン(=会社に雇われている労働者)とそれ以外(=自営業者や無職の人)で分けます

サラリーマンへの医療保険を「職域型」なんて言ったりもします。
「職域型」というのは、サラリーマンへの医療保険は、同じサラリーマンでも、どんな職業についているかによって、さらに制度が分かれるからです。職域型の医療保険は3種類です。

職域型の医療保険(=サラリーマンへの保険)
健康保険
①ー1
保険者=全国健康保険協会協会けんぽ)、
被保険者=中小企業のサラリーマン、日雇い被用者
①ー2
保険者=健康保険組合組合健保
被保険者=大企業のサラリーマン
共済組合
保険者=共済組合・事業団
被保険者=公務員・教員
船員保険
保険者=全国健康保険協会
被保険者=船員
保険者=その保険制度を仕切ってる団体のこと
被保険者=その保険制度の対象となる人のこと

では、次に、自営業や無職の人などを対象とする医療保険をまとめましょう。

非職域型の医療保険(=自営業者や無職の人が主たる対象)
国民健康保険
①ー1:例外的
保険者=国民健康保険組合
被保険者=職域保険に加入していない医者、弁護士、美容師など
①ー2:メイン
保健者=市町村
被保険者=「職域保険加入者、生活保護受給者、後期高齢医療制度加入者、国民健康保険組合加入者」以外の人すべて
まず「国民」健康保険と健康保険、「国民」がつくだけでえらく違うことは絶対に覚えてください。このあたりでつまずくと、もう「保健医療サービス」って科目が嫌になってしまうので、ここ、まずしっかり押さえましょう。
健康保険職域保険
「国民」健康保険非職域保険
さて、国民健康保険の①ー1は、例外的なもので、会社から雇用されているわけではないが、自営業者のなかでもネットワークのある弁護士や医者、美容師などが同業種で組合を作って自前で医療保険をやっている、そういう例外ケースです。サラリーマンではないので国民健康保険ではありますが、職域保険に近いものになります。
その10倍以上の人が加入しているのが、市町村が保険者となる①ー2の国民健康保険です。
これぐらい整理したうえで、選択肢を見ていきましょう。

選択肢1 〇

職域保険である「健康保険」の保険者
・全国健康保険協会(①ー1)・健康保険組合(①ー2)

選択肢2 ×

職域保険である「船員保険」の保険者
・全国健康保険協会

選択肢3 ×

職域保険である「日雇い労働者」が被保険者となる保険(①ー1)の保険者
・全国健康保険協会

選択肢4 ×

非職域保険である「国民健康保険」の被保険者
・職域保険や後期高齢者医療制度、生活保護などの適用を受けるものを除いた、日本国内に住所を有するすべての者

選択肢5 ×

ということで、選択肢1~4までは、主として75歳未満の人の医療費について、自己負担以外を埋める制度である医療保険についてでした。

では、75歳以上になるとどうなるかというと、後期高齢者医療制度になります。ただ、対象を「主として」75歳以上と書いてきたのは、それ以外の規定があるからです。

後期高齢者医療制度の被保険者
・75歳以上(強制加入
・65歳以上75歳未満で障害状態の者(任意加入

正解 1

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