ソーシャルワークから見た「日本の人口」

07社会保障

問題49 日本の人口に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 「人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)」(総務省)によると、2019年の総人口は前年に比べ増加した。
2 「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)」(厚生労働省)によると、2019年の合計特殊出生率は前年より上昇した。
3 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」によると、2065年の平均寿命は男女共に90年を超えるとされている。
4 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」によると、老年(65歳以上)人口は2042年にピークを迎え、その後は減少に転じるとされている。
5 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」によると、2065年の老年(65歳以上)人口割合は約50%になるとされている。
(注) 「国立社会保障・人口問題研究所の推計」とは、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位(死亡中位)の仮定の場合を指す。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

今回から7科目目「社会保障」に入ります。

ここで、あらためて社会福祉士(精神保健福祉士)の共通科目のここまでの構成を振り返ってみましょう。

最初の3科目「人体の構造と機能及び疾病」「心理学理論と心理的支援」「社会理論と社会システム」では、ソーシャルワークが社会科学である以上、最低限知っておかなければならない社会科学としての知識について確認しました。

そんな社会科学としての知識を踏まえ、「現代社会と福祉」ではソーシャルワークの理念を確認し、「地域福祉の理論と方法」では理念と具体をつなぐような地域福祉という概念の射程を確認しました。

その射程を踏まえて、「福祉行財政と福祉計画」では、現在の行政は施策上、財政上、計画上、何をどこまで具体的に規定しているのか、具体的に確認をしました。

ここからは「社会保障」「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」「低所得者に対する支援と生活保護制度」と続きます。この3科目では、すべての国民の生存権(=日本国憲法第25条)を保障するために、国家が具体的に作り、具体的に運営している、制度としての社会保険・障害者施策・生活保護法を確認していきます。といったところが、全体の構成を踏まえたうえでの、この3科目の役目ってところでしょうか。

すると、この問題49は、「社会保障」の最初の問題だけではなく、社会福祉関連の具体的な制度を確認していく科目郡の最初の問題なのです。

そこで、なぜ「日本の人口」について聞いているのか、わかるでしょうか。

国家規模の具体的な制度・政策であればあるほど、将来の、それも何十年というスパンで人口の動態を予測し見通さなければならないからです。

ですから、人口動態は「社会理論と社会システム」だけでなく、「社会保障」でもよく問われます。しっかり押さえておきましょう。

とはいえ、この国家試験は社会福祉士の試験であるのですから、人口動態について、そう細かいところまでは聞かれないはずなのです。

ということで選択肢を見ていきましょう。

選択肢1 ×

日本の人口は今や減少社会です。

日本の人口2008年をピークにずーっと減少

これが、今後に増加に転じることは、出生率を考えてもちょっと考えられません。

選択肢2 ×

この選択肢のヒントが、すでに第33回でやった問題にあるんです。
わかりますか?

問題15です。そこでの表をもう一度確認しましょうか。

参考 「合計特殊出生率」の最低限の知識
1947年~49年:第1次ベビーブーム ※このころは合計特殊出生率4を超えていた
↓その後10年で一気に急降下
1950年代前半から1970 年代前半:約20年ほどは、2.1前後で安定
例外 1966(昭和41)年 が1.58 ※「ひのえうま」という特殊要因
1972年~1974年:第二次ベビーブーム ※1972年 2.14  ※2.1を超えた
ただし、1974年に2.05=人口置換水準の2.07を下回り、翌年1975年には2をも下回る
ここから年々下がっていく
1989(平成元)年 1.57ショック ※「ひのえうま」の年より下がる
2005(平成17)年 1.26 過去最低
↓以後、少しだけ盛り返す
2012年~18年 1.4以上
↓それが
2019年 1.36

「合計特殊出生率」に関する単独問題でしたが、そこで合計特殊出生率は、近年上がっていたのですが、ここ1,2年また下がり始めたことを確認しました。これは知っておきたいところです。

選択肢3 ×に近い△

2065年とは、ずいぶんとまぁ先のことを聞きますねぇ~。なんともどれぐらいの平均寿命になるかは想像がつきにくいですねぇ。

ただ、1つだけ言えるのは、平均寿命においては男女で一貫して、かなりの差があり続けたというデータ上の事実です。

男女の平均寿命の差6歳程度、女性のほうが長い

この差は変わらないと予測するでしょう。実際ずーっと男女の平均寿命に差があるのですから。すると、選択肢通り「男女で平均寿命で90歳を超える」ならば、男性が90何歳で、女性の平均寿命は、は100歳近くになっちゃうんです。いくら40年ぐらい後の未来とはいえ、平均寿命が100歳に近いっていうのは考えにくいでしょう。

ということで、×に近い△にしておきました。

選択肢4 〇に近い△

この選択肢も、選択肢2と同様に、問題15がヒントになっています。

<日本の二大人口増世代>
1947年~1949年:第一次ベビーブーム=この時生まれた人「第一次ベビーブーマー」
↓ その子供世代
1971年~1974年:第二次ベビーブーム=この時生まれた人「第二次ベビーブーマー」

これ以後、合計特殊出生率もぐんぐん下がっていく

日本の人口構成は、この二つの世代がどの位置にいるのかによって、大な影響を受けます。したがって、社会保障や社会福祉施策もこの二つの世代を意識せざるを得ないのです。

例えば、2000年成立の介護保険制度は、第一次ベビーブーマーが50代を迎えてたころにできました。なぜなら、この世代は人口が多いので、この世代が60歳を過ぎたあとに、年金や介護の財源を確保しはじめては遅いからです。

では、その10年後の2010年代から「地域包括ケアシステム」なんて概念を行政が使い始めますが、これは何をしているのでしょうか。

このころ、第一次ベビーブーマーが65歳になり介護保険を使える年代になってきたものの、具体的に介護を使う人が増えるのは70代から80代からです。そして、介護保険制度は作ったものの、日本の経済成長は低成長を続け、社会保険制度での介護の仕組みを作ったものの、財源不足は否めない。ということで、地域の創意工夫でボランティア等も総動員しながら、第一次ベビーブーマーの介護を支えよう!なんてことをやっているわけです。

さて、日本の65歳以上人口がピークを迎えるのはいつごろでしょうか。

おそらく第一次ベビーブーマーと第二次ベビーブーマー、二つの山がどちらも65歳以上になるときでしょう。すると、1974年生まれの人が、65歳になるのは2039年ですから、選択肢にある「2042年」という年は、かなり近いですね。少なくともこれは将来の予測であり、社会福祉士国家試験も、そんな予測を1年2年単位で外れているから×とか、そんなところまで聞いてくるとは考えられません。

ということで、〇に近い△にしておきましょう。

選択肢5 ×

ちょっと考えても、65歳以上が人口の半数というのは考えにくいですね。

丁寧に考えてみましょうか。ずーっと老年人口が増え続ければ、2065年ごろにはそうなるでしょう。しかし、選択肢4でも確認したように、だいたい2040年前後ぐらいで、第一次第二次ベビーブーマーがどちらも65歳を超えると同時に、第一次ベビーブーマーは90歳を超えて、この世代は一気に減少していくとともに、65歳人口も減っていきます。したがって、これらデータから考えても、ちょっとありえない数字だと言えます。

正解 4

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