ソーシャルワークから見た「医療ソーシャルワーカーの対応」

10保健医療サービス
今回のポイント
医療に関する給付でも、業務内と業務外で制度が異なることを知る
科目を越境した知識が問われる問題について適切に解くやり方を学ぶ

問題76 事例を読んで、X病院のB医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)のCさんへの対応に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Cさん(43歳、男性)は、正社員として勤務する工場での仕事中に鋼板の落下によって頭部外傷を負った。救急病院で1か月の入院後、リハビリテーションの目的でX病院へ転院し3週間が経過した。下肢の片麻痺と高次脳機能障害があり、歩行のために下肢装具を製作した。CさんはB医療ソーシャルワーカーの下を訪れ、「労働災害として認められたが、今後の経済的なことがとても心配である。復職を含めたこれからの生活について相談したい」と話した。B医療ソーシャルワーカーはCさんの不安な気持ちに共感しながら具体的な情報を提供した。
1 Cさん宅へ職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣し、復職に向けた訓練ができることを説明する。
2 入院期間中は傷病手当金が支給されることを説明する。
3 装具購入費は、労働者災害補償保険法に基づいて勤務先の工場へ請求できることを説明する。
4 退院後の生活に備えて、介護保険の要介護認定の申請について説明する。
5 休業4日目以降の休業期間中は、休業補償給付に加えて休業特別支給金が受けられることを説明する。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

「保健医療サービス」の最後の問題は事例問題です。
ただし、事例問題の体を取っていますが、ジョブコーチという就労支援上の制度が絡んでいたり、労災という社会保険制度が絡んだ制度上の問題が絡んでいたりと、科目を越境した総合問題のような体になっています。それでいて、支援者の態度が問われているのでなく、知識が問われています。事例問題の解き方で解くというよりも、知識問題として割り切って解いたほうがいい、そんな問題ですね。

ということで、選択肢を1つ1つ丁寧に読んでいきましょう。

選択肢1 ×

職場適応援助者(ジョブコーチ)」は、例えば社会福祉士であれば、「就労支援サービス」という専門科目で詳しく学ぶと思います。

最低限、この選択肢に〇×をつけるにあたって、ジョブコーチに関して必要な知識は、「ジョブコーチは職場へ派遣される」ということですね。職場と本人との間をつないで、職場で居心地よく働けるような環境調整のサポートをするのがジョブコーチです。

ですから、「自宅に派遣」で、×ですね。

選択肢2 ×

「傷病手当金」が健康保険制度であることは必ず知っておかなければなりません。
なぜなら、国家試験に頻出だからです。
第25回問題55、第29回問題54、第29回問題74、第31回問題54、第31回問題70、第32回問題51、そして今回の第33回問題76と、10年で7回も、「傷病手当金」について出題されています。

というのも、この「傷病手当金」は、今回の問題もそうですが、労災と勘違いされやすいので、出題しやすいのです。

「傷病手当金」が「健康保険」つまり医療保険であるということは、「業務外(=仕事以外)での負傷」に限定されるということです。なぜなら、「業務内での負傷」ならば労災が対象にするからです。今回のケースは、仕事中に負傷したわけですから、「業務内の負傷」に当たるため、そもそも傷病手当金の対象外になるのです。

選択肢3 ×

請求というのは、お金を払ってくれる人に行うわけですよね。
これが大前提。

もし、会社に請求するとなると、装具購入費は会社もちってことになりますよ。
もしそうだとするならば、どういうことが想定されますか?
こういう事故が生じやすい仕事も社会の中にはあるわけですが、そういう仕事をやる会社がなくなってしまうでしょうね。事故が生じて、その補装具代金を全部会社がもたないといけないなんてことにしてしまっては、会社として運営できませんよ。

もちろん、装具の代金は、行政が補填してくれるわけです。だから行政に請求するに決まっているのです。

選択肢4 ×

介護保険で要介護という認定がでるのは

・65歳以上
・40歳以上64歳以下で特定疾病にあたる人

ですよね。これは知っておかなければならない知識です。

因みに、この条件以外の人は介護保険のサービスは使えませんか
そんなことはなく、地域支援事業のサービスなど、介護予防という発想の中でサービスは使えるわけです。ただ、要介護という区分を受けてのサービスとなると、上述の条件を満たさなければ使えないということになります。

すると、事例のCさんはこの条件に当てはまらないわけです。

退院後の生活に備えて、制度につなげるとするなら、「下肢の片麻痺と高次脳機能障害」という現状を踏まえると、障害者総合支援法のサービス利用でしょうね。

選択肢1や選択肢4のように、他科目を越境するような知識を総動員させて解くような、そんな問題がここ3年ぐらいで増えています。こういう問題は、その科目にあまりとらわれではダメで、
「19科目で得た知識が聞かれているんだ」ぐらいの意識を持って解いていくようにしましょう

選択肢5 〇に近い△

特別支給金については、詳しくは知らなくても、大枠の考え方ぐらいは知っておきたいところd瀬卯。

労災の特別支給金支給
労働者災害補償保険法29条に基づき、「社会復帰促進等事業」の一環としておこなわれる

ですから、社会福祉的な性格が強く、労災保険に上乗せして支払われるものという発想と理解すればいいでしょうか。

それぐらいの知識があり、△でも〇に近い△でこの選択肢を残せさえすれば、選択肢1から4までは確実に×をつけられますので、これが正解になります。

正解 5

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