ソーシャルワークから見た「障害福祉サービス」

08障害者に対する支援と障害者自立支援制度
今回のポイント
自立支援給付地域生活支援事業のノリの違いを知る
暫定支給決定の考え方を押さえる

問題59 「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 共生型サービスは、障害児が健常児と共に学校教育を受けるための支援を行うものである。
2 行動援護は、介護保険の給付を受けることができる者でも必要に応じて利用できる。
3 就労移行支援の利用には、障害支援区分の認定が必要である。
4 生活介護を利用する場合は、暫定支給決定が行われる。
5 障害児に関するサービスの利用者負担は不要である。
(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

障害福祉サービスを、ざっくりと障害者に対するサービスだと思っている人がいます。それは間違いです。ソーシャルワーカーを目指す以上、制度上の用語(=行政用語)についてはしっかり押さえておきましょう。

障害福祉サービスとは?
障害者総合支援法」の自立支援給付でのケアサービスのこと
介護給付訓練等給付に分かれる

ですから、例えば知的障害者福祉法に基づくものは「障害福祉サービス」とは言いません。また、「障害者総合支援法」における移動支援についても、外出支援というケアサービスではありますが、移動支援は市町村地域生活支援事業の必須事業ですから、「障害福祉サービス」とは言いません

そんな障害福祉サービス」は、どんな障害者でも地域で生きていく上で必要なことを費用的にも国・県・市でしっかり支える、そんな具体的なサービスですから、障害者総合支援法の根幹を支えるものです。そういう背景もあり、3年に2回ペースで単独問題で出題されています

さらに言うと、第31回からは今回含め3回連続での出題(第31回問題58、第32回問題題58)になっています。第27回問題57はかなり厳しく、サービスごとの障害支援区分の条件も覚えせせたほうがいいかなと思わせるようなものでしたが、第31回から第33回の問題はどれもそれぞれのサービスについて、レジュメ程度の知識で十分解けるものしか出ていません。また、第28回問題59、第32回問題58では、事例に絡めて適切なサービスを選ぶ問題ですが、難易度は高くありません。問われている程度の知識はしっかり押さえたいところです。

選択肢1 ×に近い△

共生型サービス」について、しっかり触れられている教科書はありません。せいぜい軽く載せてる程度ですね。「軽く」というのは、大した話じゃないからです。

これは、2018年度(平成30年度)の関係法令の改正によって、介護保険法または障害者総合支援法のどちらかの指定を受けている事業所が、もう一方の制度の指定を受けやすくしたという、それだけの話です。

もし知らないとしても、「障害福祉サービス」が自立支援給付のケアサービスとわかってさえいれば、「障害児が健常児と共に学校教育を受ける」なんてアバウトで理念的なものが入ってくるはずがないのです。

こういった大雑把なノリを、地域の創意工夫でやる、みたいなノリは地域生活支援事業のほうのサービスで見られるものです。

ただこのへんのノリがわからない人が整理して対比しておきましょうか。

「自立支援給付」と「地域生活支援事業」のノリの違い
〇自立支援給付
かかったお金は国1/2、都道府県1/4、市町村1/4で義務として払う(義務的経費)
→国からすると
「税金収入減る中で、1/2も高値で費用負担するんだからさ。
障害者が地域で生活する中で、どんな障害者でも、どんな地域でも、最低限必要なもの以外出さないぜ!」それが①障害福祉サービス(介護給付+訓練等給付)②相談支援③補装具④自立支援医療
→国「この4つだけは義務として保障しよう。ただしこっちが決めたルールどおりやらないと払わないからねー。」
※市町村は、①~④をそれぞれほぼ国が決めたルールどおり全国一律で運営〇地域生活支援事業
かかったお金を国や県、どれだけ補填するかは国や県の裁量による(裁量的軽費)
→国からすると
「自立支援給付で足りない部分を、市町村の創意工夫でやってねぇ~」
「お金はできる範囲で、としか言えないけど補填してあげるからさ~」
「義務として金払えない分、サービスのやり方やルール設定は市町村で自由にしていいよ~」
※地域生活支援事業の名義で何をどれだけやっているかは市町村より全然違う

選択肢にある「障害児が健常児と共に学校教育を受けるための支援」って、明確に何をどうしたら一時間当たりいくらとか、そういう発想ではやれないでしょう。(逆に言うと、自立支援給付は「何をどうしたら1時間当たりでいくら」とか、そういうはっきり決められるようなものしかないんです。)

なので、この選択肢は、わからなくても×に近い△ぐらいにしておきたいですね。

選択肢2 〇に近い△

選択肢1と合わせ、介護保険との絡みですね。

介護保険優先原則」なる考え方があります。ちょっとこの問題を解くためには余計な話ですが、この考え方を知っておきましょう。

介護保険優先原則の考え方
65歳を過ぎた障害者の場合、社会福祉上で対象となる制度上のカテゴリーとして、二つに当てはまるわけです。
①障害者 ②高齢者
このように複数の制度にまたがるなんてことは社会福祉においてはよくあることです。そこで、「どっちの制度を優先するか」問題が発生するわけです。ただ、措置の場合だったら、全て行政判断ですから、健康で文化的な最低生活を保障するにあたり、ある意味行政都合でどちらの制度に当てはめるか行政が判断してたわけです。だから、どの制度を優先するかなんて行政問題にすぎなかったんです。
ところが、今は契約制度中心。そして、「障害者総合支援法」によるサービスも「介護保険法」によるサービスも、どちらも契約制度だって国は言っているわけです。「契約」って、ざっくり言えば、売買行為です。本人がペットボトルをどこのコンビニで買おうが自由、これが「契約」の大前提。ですから、契約行為に対して「どっちを優先してください」なんて言うのはおかしいのですが。なのに、国は「障害者総合支援法」のサービスと「介護保険法」のサービス、どちらも使う権限がある人に対し、同じようなサービスなら介護保険のサービスを優先して使ってね(=市町村は優先して介護保険のサービスを使わせるように方向付けてね)なんて言っているのです。
国はなんで、そんなこと言える権限があるのですか?実は「障害者総合支援法」は契約制度ではあるのですが、、全額公費(=要は税金)でやってるんです。税金政策である以上は、行政は口出せるんですよ。

理屈としては、こんなところですかね。

ここで大事なのは「原則」なんです。絶対ではない。だから、障害者総合支援法と介護保険法で同じようなサービスがあったとしても、障害者に特化したサービスをやってきた障害者総合支援法の事業所が、65歳を過ぎても継続してサービスをやるのが本人にとってよいならば、継続して障害者総合支援法のサービスを使う、という判断をしてもいいんです。

そして、ここで、選択肢1につながるんです。
共生型サービス」とは、そんな障害者総合支援法のサービスしかしていないような団体でも、介護保険法の指定を取りやすくするということです。それによって、今までの支援と同じことをやっていても、本人が65歳を過ぎたら介護保険法のサービスとしてやってるっていう体にできるような仕組みをつくりたいんです。

ただ、この選択肢2は「介護保険優先原則」なる考え方を前提にしたとしても、「介護保険法」には外出支援に特化したサービスがありません同じサービスがない以上、「行動援護」をはじめとした障害者総合支援法上の「外出支援」のサービスは、介護保険の給付を受けることができる者でも、必要に応じて利用できる、ということになります。

ちなみに。では、「障害者総合支援法」の外出支援サービスをまとめておきましょう。

「障害者総合支援法」上の「外出支援」サービス
同行援護(自立支援給付の介護給付)視覚障害者限定
行動援護(自立支援給付の介護給付)障害支援区分3以上で、行動障害があると判定されたもの
移動支援(市町村地域生活支援事業の必須事業)対象は市町村判断
例外
重度訪問介護(自立支援給付の介護給付)障害支援区分4以上+その他条件あり
外出支援のみならず、居宅内も含めた支援が可能
居宅介護(自立支援給付の介護給付)障害支援区分1以上
通院、官庁等への用事、契約制度サービスの相談等、この3つに限って外出支援可

選択肢3 ×

訓練等給付のサービスと介護給付のサービスの違いとして、障害支援区分の認定が不必要か必要か、その違いがあるのでしたね。これは基本中の基本です。
第30回問題59選択肢1つまり過去3年分でも出題されています。間違っちゃダメ!な問題ですよ。

第30回問題59 「障害者総合支援法」に基づく就労継続支援A型のサービスの利用に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 障害支援区分の認定が必要である。

もちろん、「就労継続支援A型」は訓練等給付ですから、障害支援区分の認定は必要ではありません。

選択肢4 ×

暫定支給決定」の話は結構マニアックと言えばマニアックなものです。なぜなら、市町村によってやり方等含め、異なるからです。ですから、教科書等読んでもわかりにくいですし、さらに現場でやっている方からすると「こんなの違うよ」と思われる方も相当いらっしゃると思います。

ただ、国家試験が聞いているのはあくまで「暫定支給決定」の考え方に過ぎません。

さらにいえば、これまた過去問の3年分で同じことが出ているのです。第30回問題59選択肢2です。

第30回問題59 「障害者総合支援法」に基づく就労継続支援A型のサービスの利用に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
2 暫定支給決定の仕組みがある。

暫定支給決定について、基本的な考え方だけでいいので整理しておきましょう。

訓練等給付サービスだけに行われる暫定支給決定とは?
暫定支給決定約二か月間のお試し利用→それでうまくいったら支給決定へ
お試しの選択肢就労継続支援A型or就労移行支援or自立訓練(それ以外もあるが略)暫定支給決定の目的 一般就労する障害者を増やすための工夫
→安易な「就労継続支援B型(=安住しやすい就労形態)」の利用[=例 高等部卒業後 すぐB型へ行くこと]を制限し、まず一般就労目指せないのか、必ず確認しろ!という国からのメッセージ
※ゆえに、就労継続支援B型はお試しの選択肢には入っていない!!

暫定支給決定は訓練等給付サービスのみで行われるのですよね。
では、「生活介護」って何?「介護給付」サービスでしょう。だから、「暫定支給決定」なんてありえないのです。

選択肢5 ×

利用者負担とは、サービスを利用したときに障害者が払う費用のことです。
利用者負担については、障害者自立支援法が2006年に施行されて以後、一貫して一割負担なんです。これ、勘違いしている人が多いところです。

※というのも、このあたりについての教科書の書き方がややこしいから。応益だ応能だって、そんなわけ方で無理から説明しようとするからですが。

利用者負担の軽減は、一割負担を維持しつつも所得に応じた利用者負担上限月額という制度の採用によってなされています。

それゆえ、障害児ならば保護者の収入によって、生活保護世帯や市町村民税非課税世帯なら上限月額0円だけど、それ以外なら上限月額までは一割負担になるのです。

正解 2

【お勧め関連本】
障害者総合支援法の本で、これぞ入門書みたいなものって、なかなかいいものがないのですが、このあたりは売れていて、確かに読みやすいかなとは思います。

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