ソーシャルワークから見た「在日外国人支援での対応」

14相談援助の理論と方法
今回のポイント
問題文の「この時点での」を正解への誘導として理解できるようにする。
1%でも可能性があれば、選択肢を残す理由を理解する。

問題104 事例を読んで、在日外国人支援を行うX団体のA相談員(社会福祉士)によるBさんへのこの時点での対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
外国籍の日系人Bさん(45歳、男性)は、半年前に来日し、Y社で働いていたが、1か月前にY社が倒産し職を失った。今後の生活について相談するため、在日外国人支援を行うX団体を訪ねた。A相談員との面接では、以下のことを語った。母国では、今日まで続く不況により一家を養える仕事に就けず、家族の生活費を稼ぐため来日したこと。近い将来、母国で暮らす家族を呼び寄せたいと思っていること。現在求職中であるが日本語能力の低さなどからか、仕事が見付からず、もうこのまま働けないのではと思っていること。手持ちのお金がなくなり当面の生活費が必要なこと。なお、Bさんは在留資格(定住者)を有することを確認した。

1 一旦帰国することを提案する。
2 これまでの就労経験を確認し、働く上での強みを明らかにする。
3 生活福祉資金貸付制度などの仕組みを説明し、希望があれば窓口へ同行することを提案する。
4 日本語を学び直し、日本語能力を早急に高めることを勧める。
5 家族を呼び寄せることは無理であると伝える。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

さて、この問題。事例問題に慣れてきましたかね。
ただ、よく聞かれるのが、事例問題で、残った△の選択肢から、優先順位1位の選択肢に〇
をつけるときの、優先順位の原則は「事例の後、早くやる順」だと言っていますが、この事例の問題文のように「この時点での対応」なんて書いてあれば、これはもう「早くやる順」確定です。この時点って言ってるんですから。近年の問題はこのように、「早くやる順だよ」って問題文が教えてくれること多いです。

そうなんです。問題作成者はこのようにしっかり正解を誘導してくれてるんです。だから、問題文はしっかり読まないとダメなんです。

①100%誤りといえるものだけに×をつける。※1%でも可能性があれば残す!

100%×は? 選択肢5

問題95でも確認した通り、わざわざ社会福祉士とつけている以上、「社会科学としてのソーシャルワーク」の見方・考え方を踏まえなければダメで、事例に書いてあることから勝手な推論をしてはいけません。「家族を呼び寄せることは無理」という根拠はどこにありますか?確かに今は休職中ですが、だから家族は呼び寄せられないですか?今すぐ呼び寄せいたいと言っているんじゃないんですよ。「近い将来、母国で暮らす家族を呼び寄せたい」と言っているんですよ。それでも「無理」という根拠は事例のどこにありますか?なのに、「無理です」という断言の伝え方でいいんですか?

それでも、「いやぁ、休職中だから当分無理だよ」という判断は、あなたの推論であり解釈です。
「社会科学としてのソーシャルワーク」である以上、推論や解釈を、断言で対応してはしてはダメです。

②残った△の選択肢から、優先順位1位の選択肢に〇をつける (優先順位の原則は「事例の後、早くやる順」)

さて。残ったのが選択肢1、2、3、4ですね。
選択肢1とか4を①段階で排除した人もいるんじゃないでしょうか。でも、私は残します。帰国や日本語の学び直しも選択肢として全くあり得ないわけではないですし。また、断言ではなく、提案や勧め、ですからね。
こういう選択肢を残しておくこと、これ大事です。①段階でなんとなしの感覚で×にしちゃうことを防ぐためです。①段階でなんとなしで選択肢を×にしちゃうと、②で救済することは不可能です。だからこそ、①段階では、可能性があるならあらゆる選択肢を残したほうがいいのです。

そのうえで、さぁ、この4つの選択肢で早くやる順だとしたら、どうですか?

今日の「社会科学としてのソーシャルワーク」では、できる限り本人の希望に沿う選択を提示します。いくらそれが現実的な選択肢だとソーシャルワーカーが考えたとしても、本人の希望に沿わないような選択を提示すれば、本人がその選択を飲むわけもなく、結果として、本人との関係が切れてしまうだけだからです。

すると、こういう事例では、何が本人の希望なのかをしっかり把握する必要があります。この事例で提示されている本人の希望は何ですか?

①近い将来、母国で暮らす家族を呼び寄せたいと思っている
②現在求職中である

このニーズを踏まえて。

選択肢1は、帰国を勧めるのでしたね。帰国したあとまた日本に戻ってきて①②を叶えるのは全くあり得なくはありません。ただ、「母国では、今日まで続く不況」ってあるのに、母国に行って、体勢を立て直して、また日本に戻ってきて、日本に家族を呼び寄せるっていうのは、相当な長期の話になるでしょうね。全くないとは言わないけど、どー考えても長期の話です。

選択肢4は、日本語能力を高めるのか。んー、これもあり得ない選択肢ではないですし、選択肢1よりは早い可能性はありますが、でも「今ここ」でまずすぐやる提言というより1年、2年後ぐらいを見据えた話ですよね。

一方で、選択肢2の「これまでの就労経験を確認し、働く上での強みを明らかに」ってのは、就労した経験があれば、いますでにある強みがあるんじゃないかと仮設し、その強みをまずは探ってみようとしています。これは、先のために「日本語を新たに磨く」ことや、「いったん母国に帰り出直す」よりは早くやれますし、悪くない選択です。
そして、選択肢の3「生活福祉資金貸付制度などの仕組みを説明し、希望があれば窓口へ同行」ということで、生活福祉基金貸付は外国人労働者でも使えることぐらいは知ってなきゃいけません。通る可能性はあるし、通ればお金の貸し付けは早いですから、これもまた選択肢1や選択肢4よりは早い。

じゃあ、選択肢2と選択肢3でどっちが早いかと言われると「うーん」とうなっちゃいますが、この問題は二択ですね。だったら、選択肢2と選択肢3、どちらも正解で、はいOKですね。

正解 2と3

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