ソーシャルワークから見た「調査票の配布と回収」

12社会調査の基礎
今回のポイント
質問紙と調査票の違いを理解する
調査票の回収、配布のやり方による分類を、メリット・デメリット含め整理する

問題89 調査票の配布と回収に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 集合調査は、多くの人が集まる場所で調査票を配布後、個々の調査対象者に対して回答を尋ねて、調査員が調査票に記入して回収する方法である。
2 郵送調査は、調査対象者に調査票を郵便によって配布後、調査員が訪問して、記名のある回答済の調査票を回収する方法である。
3 留置調査は、調査対象者を調査員が訪問して調査票を置いていき、調査対象者が記入した後で調査員が回収する方法である。
4 訪問面接調査は、調査員が調査対象者を訪問して調査票を渡し、調査対象者に記入してもらい回収する方法である。
5 モニター調査は、インターネット上で不特定多数の人々に調査票を配信して回収する方法である。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

前の問題88「質問紙」と、この問題89の「調査票」。何がどう違いますか?
それがわからないと、前の問題からどう引き継がれての問題89なのかがわからなくなります。

質問紙と調査票の違い
質問紙=質問の形式やその媒体
調査票=質問紙だけでなく、質問に応える際のマークシート等全部含みこんだもの

ですから、質問紙は作るものではありますが、回収されるものではありません。回収に焦点を合わせるなら、調査票っていう用語になります。

つまり、調査票と言った時点で、「回収してなんぼ」なんです。なぜそんなに回収にこだわるか。それは、問題86選択肢5ですでにやってるんです。

第33回問題86
5 無作為抽出法による標本調査では、サンプルサイズの大小は、母集団を推計する信頼度に関係しない。

これ×でしたね。標本調査はサインプルサイズによって母集団の推計の信頼度が変わるんです。サンプルサイズはもちろん回収率に関わります。調査しても、回収率が悪ければサンプルサイズは小さくなり、結果として信頼度が下がります。だからこそ、「回収してなんぼ」なんです。

ただし、「回収してなんぼ」とはいえ、調査の規模や、調査にかけられる予算や、調査の目的に合わせて、どれぐらい回収する必要があるか、そのあたりが変わってきます。それゆえ、調査の予算や規模、目的に合わせて、回収の方法にもいくつか種類があるのです。そこが狙われているのです。ソーシャルワークをするにしても、今や組織に所属して行うことがほとんどであり、所属する組織によって、社会調査をするための予算や規模は違うに決まっています。ですので、これら回収方法について、整理しておくことを国家試験問題作成者は求めているのでしょうね。

選択肢1~5まで、どれも基本的なものばかりです。この問題も確実に取りたいですね。

選択肢1 ×

まずは集合調査ですね。

回収という観点から、調査の仕方を分ける場合に、他記式と自記式で整理されることが多いですので、これもやっておきますか。

自記式他記式の違い
自記式=調査対象者が記入する
 長所:時間と予算が抑えられる
短所:記入ミスが一定程度出る
他記式=調査者が記入する
 長所:記入ミスを減らせる
短所:時間も予算もかかる

これを前提に、まずは集合調査

集合調査 ※自記式
→調査対象者を一カ所に集めて、調査対象者に記入してもらう
長所:とにかく効率がいい(=1回の説明でたくさん回収)。記入ミスを確認できる
短所:「その時間に来れる人」というバイアスがかかる。集団の雰囲気に呑まれる。
選択肢の説明では、他記式になってますね。

選択肢2 ×

郵送調査 ※自記式
調査票を郵送し、調査対象者が書いて郵送で送り返してもらう
長所:費用が安くなる。集団の雰囲気に呑まれない。
短所:記入ミスが増える。回収率が低い。調査対象本人が書いたかわからない。
本人じゃなく、家族が代わりに書いちゃってるなんてことはよくある話で。
選択肢は、「調査員が訪問」ってところが誤りですね。

選択肢3 ○ 選択肢4×

留置調査と訪問面接調査、どちらも基本的な配布・回収方法の種類になります。見てすぐ○×が確信もって言える程度になって欲しいですね。

留置調査 ※自記式
→調査対象者を訪問し、調査票を直接渡して、後日、回収に行く
長所:その場で記入ミスが確認できる。回収率が上がる。
短所:費用も時間もかかる。回収に来て確認されるとわかっているので、自由に応えられない。
訪問面接調査 ※他記式
→調査対象者を訪問し面接しながら、調査員が記入する
長所:信頼度の高いデータを得られる。回収率が上がる。
短所:費用も時間も膨大にかかる。調査員との関係に回答が左右される。
ということで、選択肢の説明は、選択肢3と選択肢4でひっくりかえっていることがわかれば十分です。

選択肢5 ×に近い△

モニター調査という言い方は、社会調査の正式な言い方というよりは、経営学における商品調査などを含めた、一般名称ですかねぇ。商品の使い心地などを企業が聞く、そんなものをモニター調査として聞くことがありませんか。その形式のことをモニター調査というので、調査票の配布やその回収の方法については、郵送もあれば、電話での者ものあれば、ネットのものもあれば、訪問もあれば、いろいろです。

これは確信もって×というより、×に近い△ぐらいにできればいいですかね。もしくはノーマルな△でも、選択肢3を見て○をつけて、この問題としては救済です。

正解 3

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