ソーシャルワークから見た「社会福祉士の初回面接の対応」

14相談援助の理論と方法
今回のポイント
アプローチの話と、ケースワークの展開過程の話、この二つの違いを知る。
・そのうえで、「インテーク」の役割・特徴を整理する。

問題102 事例を読んで、N市の地域包括支援センターのJ社会福祉士の初回面接の対応に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
J社会福祉士は、初めて地域包括支援センターに来所したKさん(66歳、女性)の相談を受けた。「娘が結婚して家を出て以来、夫と二人で暮らしてきました。1年前に夫が定年で退職した頃から、夫が塞ぎ込み不眠にも悩まされるようになりました。V病院を受診していますが、一向に良くなりません。私にささいなことで怒鳴ることがあり、どうしたらいいか分かりません」と不安そうに話した。
1 夫婦間の問題であるため、配偶者暴力相談支援センターに相談するよう伝える。
2 夫の不眠の症状を改善させる方法をアドバイスする。
3 Kさんが問題や不安を落ち着いて語れるように心掛ける。
4 V病院にKさんの夫の医療情報を照会する。
5 Kさんに対して地域包括支援センターの役割について説明する。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

「相談援助の理論と方法」という科目では、問題101でやった機能主義アプローチや診断主義アプロ―チあたりからはじまるアプローチの話を学びます。もちろん、それだけではなく、「インテーク→アセスメント→プランニング・・・」といったソーシャルワークの展開過程も学びます。
ただ、この二つがどうつながっているのか、それがあまりよくわかっていない人が少なくありません。

その理由の1つとして、教科書上はこの二つが分かれていることがあるだろうと私は思っています。アプローチの話は「相談援助の理論と方法Ⅱ」という教科書、ソーシャルワークの展開過程のほうは「相談援助の理論と方法Ⅰ」という教科書で学びます。この二つの教科書がどうつながっているのかがわからないのです。
ただし、教科書では、この二つをなぜ分けていて、どうつながるのかについて、丁寧に書かれています。参考書やネット情報、問題集のみでやろうとすると、わからないでしょうね。わからないからますます暗記で処理するってことになるんだろうな、と私は考えていますが、いかがでしょうかね。

さて、社会福祉士国家試験ではたくさんの事例問題が出題されます。そして、それぞれ違う現場から事例が出されます。すると、事例を踏まえた細かい知識を聞かれているように思っていしまいますが、そうではありません。必ず社会福祉士が登場するのです。「いやいや、その現場に即した職種が事例では出てくるよ」と思われるかもしれませんが、過去問をよく見て下さい。例えば、児童福祉の事例問題で、児童福祉司が出てきたとしても必ず「K児童福祉司(社会福祉士)」と社会福祉士であることがカッコ入れで明示されます。つまり、この事例問題は、現場に特化したスペシャルなことをことさら聞こうとしているのではなく、「あなた方の学んだ社会福祉士の学び以上のことは聞きませんよ」と問題作成者は言っているのです。

特に、この「相談援助の理論と方法」の「インテーク→アセスメント→プランニング・・・・」といったあの援助過程を聞く際はそうです。「相談援助の理論と方法Ⅱ」という科目名で学である援助過程、これはソーシャルワークどこの現場かに限らない共通の過程だからです。事例問題では、そこをよーく意識して下さい。突飛なことを聞いているのではないのです。そこが「相談援助の理論と方法Ⅰ」で学ぶアプローチと違うところです。

アプローチはそれぞれどこに目を向けているかによって違いがあり、アプローチを国試が聞いてくるときはもちろんそれぞれのアプローチの違いを聞いてきます。(問題101が典型) ところが、事例適切問題はほとんどがソーシャルワークの共通のプロセスを聞いています。

そんな大前提を踏まえたうえで。

ソーシャルワークの共通の援助過程で、初回面接を含む最初の入り口のことをインテークと呼びます。この問題は初回面接、インテークの特徴を知っているかどうか、それが問われています。

そして、今のソーシャルワークは措置中心の時代と異なり、まず最初に「障害」「高齢」「児童」「貧困」といった制度があるのではありません。もう少し精確に言えば、措置中心の時代の社会福祉は、これら枠組みは問題ありきで決まっています。問題が最初から定義づけられているのです。だから、初回面談での役割は、そこで語られる問題が、法的にどの問題なのかを、正しく把握し、正しい法律で正しい施設に誘導できる、そのような知識が求められます。この人の問題は「障害」問題、だから、知的障害者福祉法で対応、とかね。

一方、契約制度中心以後のソーシャルワークの考え方は、これら枠組みに関係なく、地域で生きるどんな人でも生きやすい、そんな地域を目指します。すると、そもそもこれら枠組みに初めから当てはまる問題があるのではなく、ひとりひとりがどんな問題を抱えているかが違うのです。だからこそ、契約制度以後の制度上のサービスだって多様にならざるを得ませんし、それらサービスでの組み合わせも多様、さらに制度を超えたインフォーマルなサービスも必要なのです。

じゃあ、それらサービスをどのように組み合わせるか。それは、本人からその問題がどのような問題なのかを話してもらうしかないのです。しかし、いきなり知らないソーシャルワーカーに自分の生きづらさに伴う問題の核心なんか話せるわけがありません。まず初対面なのですから、相手としてはソーシャルワーカーが信頼できるかどうかわかりませんし、そもそもソーシャルワークって何だよと思いながら来るのです。

そんな中での初回面接。まずは、問題の核心に迫ることよりも、話してもらえるような関係性を作ることが最優先です。いきなり問題の核心に迫ったところで、本人だって何がどう問題なのかわかってないことなんかざらです。そんななかで何が問題かを聞いて、体よく話を聞き出せたとしても、それが問題の核心なのかもまだわかりません。だから、初回面接の段階で、具体的な判断など簡単にしちゃいけないのです。

ただし、唯一、初回面接の段階で具体的な判断をしていい、むしろしなければならない場面があります。それは生命の危機であり、その典型例が虐待です。児童虐待で、児童の安否をすぐにでも確認する必要があると初回面接でも判断出来たら、具体体に動きます。事例問題でも、ここ5,6年そのような問題が出てきてはいます。

とはいえ、これは例外です。虐待事例以外のインテークにまつわる事例問題は、ほぼ100%に近く、具体的な判断をしちゃだめで、関係を築き、そのうえで情報収集する、ということになります。

ということで、選択肢の文末だけを見てみましょう。日本語は文末表現がその文全体の意味を拘束するからです。

1 伝える。
2 アドバイスする。
3 心掛ける。
4 照会する。
5 説明する。

どうですか?「伝える」(選択肢1)「アドバイスする」(選択肢2)「紹介する」(選択肢4)は具体的な判断をしちゃってることがわかりますか?
一方で、「心がける」(選択肢3)と「説明する」(選択肢5)は具体的な判断ではないでしょう。ということで、この二つの選択肢を丁寧に読むと、インテークの特徴そのものが書いているわけです。ソーシャルワークという見方を知らない、そんな不安を抱える対象者にまず、地域包括支援センターの役割やソーシャルワークの見方を丁寧に説明し、そのうえで、話しやすい環境づくりを心掛ける。

ということで、選択肢3と5に当たりをつけたうえで、ざっと事例に目を通し、間違いないなと書くにしておしまい。

正解 3と5

 

 

 

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