ソーシャルワークから見た「記録における逐語体」

14相談援助の理論と方法
今回のポイント
・記録の文体を「解釈を加える/加えない」で整理する
何のために記録をつけるか、改めて考えてみる

問題115 ソーシャルワークの記録に関する次の記述のうち、逐語体の説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントの基本的属性に関する事項を整理して記述する。
2 経過記録などに用いられ、ソーシャルワーク過程の事実経過を簡潔に記述する。
3 出来事の主題に関連して重要度の高いものを整理し、要点をまとめて記述する。
4 出来事に対するソーシャルワーカーの解釈や見解を記述する。
5 ソーシャルワーカーとクライエントの会話における発言をありのままに再現して記述する。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

記録のための文体の種類についての問題ですね。過去問でどんな風に出ているか、確認してみましょうか。

参照 過去問で「記録のための文体の種類」について触れられている問題

第29回問題118 相談援助の記録方法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
×1 逐語体は、あらかじめ設定している援助課題の項目ごとに時系列で援助過程を簡潔に示すものである。
×2 叙述体は、事実やその解釈、見解の要点を整理して示すものである。
×3 要約体は、ソーシャルワーカーとクライエントの相互作用について時間経過に沿って詳細に示すものである。

第28回問117 記録の形式と文体に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
×4 逐語体は、会話の一語一句を聞き取って、その要点をまとめて箇条書きにしたものである。
×5 説明体は、事実についてのクライエントによる説明や解釈を記述するものである。

第25回問題118 相談援助における記録に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
×1 叙述体による記録では、実践の説明責任を示す根拠となるよう、事実の経過とともに、面接のやりとりを発話どおりに文字化する。
×2 他機関からの報告は、記録の客観性を担保するため、ワーカーの判断を混じえず、かつ内容の取捨選択をせずに逐語体で記述する。

なんて感じで出題されてますけど。
ただ、全部×の選択肢ですね。ちょっとこれら選択肢だけでは、整理しにくいなぁ~。
じゃあ、しようがありません。これら過去問や教科書等踏まえて、改めて整理しまとめてみますか。

私なりの整理になりますが。

記録について整理する際に、まず大事なのは、記録が記録者の解釈によるものなのか、そうでないのか、ここです。
ただし、その二つを、ただただ丸暗記してはすぐ忘れるだけです。
記録を「解釈を加えるのか/解釈を加えないのか」で分ける根拠は、「なぜ記録を取るのか」、その目的によります。
そこまでしっかり論理的に理解してこそ、知識として定着するのです。

<記録者の解釈を加える文体>
説明体:事実に対し、記録者の解釈を加え説明する文体
→評価、診断、援助に対するプロセス(過程)記録のなかで用いられる
※「なぜそういう評価?」に説明を与えるため

要約体:事実に対し、記録者の解釈を加え、情報を要約した文体
→ケースカンファレンスに提出する記録などで用いられる
※問題点などを議論するため

<記録者の解釈を加えない文体>
逐語体:事実に対し、記録者の解釈や意見を加えず、会話のやりとりをありのままに記述した文体
→テープレコーダーで採録した記録などで用いられる
※現任訓練や教育目的のため過程叙述体:事実に対して、記録者の解釈や意見を加えず経過を時系列的にまとめた描写的な文体→インテークなどの場面で会話をそのまま記録などで用いられる
※危機状況なのかそうでないか、正確かつ速やかに判断するため

圧縮叙述体:事実に対して、記録者の解釈や意見を加えず要点を整理し、情報を圧縮した文体
→スーパーバイザーに見せるときの記録などで用いられる
※指導を仰ぐ際に、要点を整理しつつ、現実そのままに提示する必要があるため

選択肢1 ×

これは、記録の文体のことではなく、シートの種類を問うていることがわかったでしょうか。

<記録としての○○シート>
フェイスシート:インテークでの基本情報を記録
アセスメントシート:アセスメント結果を記録
プロセスシート:ソーシャルワーカーとクライエントとの相互作用を時系列に記録
エバリュエーションシート:援助の有効性や満足度などの効果測定について記録

クライエントの基本的属性は、インテークという初回面接段階で整理し、記録します。そのような事項を整理したシートを「フェイスシート」と言います。それゆえ、選択肢1は、文体の説明というよりも、フェイスシートの説明ですね。

選択肢2 ×

経過の記録ということは、「経過を事実のまま知りたい」から記録するわけですよね。すると、<記録者の解釈を加えない文体>であり、さらに、経過を時系列的にまとめるのであれば、過程叙述体ということになります。

選択肢3 ×

「出来事の主題に関連して重要度の高いもの」が何かなんて、解釈によらなければ確定できません。だとするならば<記録者の解釈を加える文体>になります。そのなかで、「要点をまとめて記述」となれば、要約体しかありません。

選択肢4 ×

「出来事に対するソーシャルワーカーの解釈や見解」ということで、<記録者の解釈を加える文体>になります。ただ、説明体か、要約体か、これだけでは確定できませんが、選択肢3が要約体なので、選択肢4は説明体だと解釈するのが妥当でしょう。

とはいえ、選択肢4の説明が、要約体だろうが説明体だろうが、逐語体ではないのは間違いないので、×は確定です。

選択肢5 ○

選択肢の「ありのまま再現して記録」するのですから、<記録者の解釈を加えない文体>です。そのなかでも「ありのまま」なのですから、逐語体で確定です。

正解 5

【お勧めの入門文献】

初心者にも読みやすく、よくまとまっています。ソーシャルワークの記録について、入門的なもので、これといったものがなかったのですが、これはいいでしす。

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