ソーシャルワークから見た「相談援助に関わる職種の根拠法」

13相談援助の基盤と専門職
今回のポイント
相談援助系科目を使い「最低限覚えておかなければならないものを知る方法」を知る。
任用資格の意味を、措置と契約の対比から、理解する。

問題96 相談援助に関わる職種の根拠法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 民生委員は、社会福祉法に規定されている。
2 介護支援専門員は、老人福祉法に規定されている。
3 児童福祉司は、児童福祉法に規定されている。
4 社会福祉主事は、生活保護法に規定されている。
5 身体障害者福祉司は、「障害者総合支援法」に規定されている。
(注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

この問題は、先の問題93でと同様に、科目横断的なものです。
先の問題91で説明したように「相談援助の基盤と専門職」を含む相談援助系科目はそもそも9割ぐらい取れて当たり前ぐらいの難易度の問題しか出題されません。すると、たとえ科目横断的な問題だとしても、問題93でも解説した通り、相談援助系の科目で出題されている以上は基本的な問題なのです。

このブログのタイトルは「社会福祉士国家試験をロジカルに解く技法」ですが、だからといって、何も覚える必要がないわけはありません。私は「ロジカルに読み解くことよって覚えることは減るんだ」ってことを伝えているだけです。かつて、大学受験の参考書で『例の〇法』なんてものがありました。それは「『×△〇ではない』という文末で終わる選択肢は間違いの可能性が高い」的なノウハウばかりが載っていて、この手の解法を私が言う「論理的な技法」と勘違いしている人が少なくありません。全く違います。

例えば、国家試験の三年分ぐらい解けば、「相談援助系科目」についてはやたらと難易度が低いということがすぐわかるはずなのです。すると、そんな相談援助系科目で出題されるような問題はどれも基本問題であって、だったら、この科目で出題されるもので、ロジカルに考えて正解が導けるものじゃないのであれば、しっかり覚えなきゃダメなんだな、というふうに思えるはずなんです。こうやって、問題作成者による問題の構成から考えて、覚えるべきことを絞っていくこと、これが論理的な思考です。

ということで、この選択肢の5つは、論理的にどうこうじゃなくて、日本で社会福祉士として活動したいのであれば、どれも覚えてなければならないものばかりです。ただ、むやみやたらに覚えるのではなく、法律はきわめて論理的にできている以上、その理屈さえ分かれば覚えやすいのです。

そのような論理的に覚えるヒントぐらいは解説してみましょうか。

選択肢1 ×

「民生委員」の根拠法は、社会福祉士法ではなく、民生委員法ですね。
じゃあ、なぜ社会福祉士法に規定されているわけがないのですか?それに応えるためには、社会福祉法という法律の特徴を知っておく必要があります。社会福祉法とは、もともとは昭和二六年(1951年)に「社会福祉事業法」として成立しましたが、社会福祉事業が公明かつ適正に行なわれることを目的に作られました。だから、社会福祉事業に関する様々な職名や施設名が規定されているわけです。
じゃあ、なぜ民生委員が規定されていないのですか?民生委員は、ありていにいえば「ボランティア」という扱いなんですよ。だから、法的には、社会福祉事業に直接関わるものではなく、間接的に関わるぐらいの位置づけなんです。

選択肢2 ×

1951年に社会福祉事業法が成立し、戦後の社会的混乱を急いで処理するための「福祉三法体制」が確立します。緊急性から言って、貧困者、児童、身体障害者、この3つのカテゴリーは何よりもまず優先して制度を作りました。それが、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法であり、これらの制度を支えるのが社会福祉事業法だったわけです。1940年代後半から50年前後までのことです。

そこから10年ほど経て、高度経済成長に入り、国全体として多少の余裕が出てきた中で、社会福祉の対象を拡大したのが、福祉六法体制です。対象は、当時の言い方で言えば、老人、精神薄弱者、母子家庭ですね。これらの制度が整備されました。1960年代のことです。ということで、この選択肢にある「老人福祉法」は福祉六法体制下で成立したものです。

福祉六法体制までの法律は、どれも措置によるもので、行政がすべての責任を負い、行政が自ら措置として社会福祉を成すことを想定していました。(もちろん、社会福祉法人に代替してもらうことはありますが、それはあくまで代替であり、社会福祉法人が民間として行うという発想は、福祉六法体制下では、そもそもありませんでした。

それに対して、1990年代後半の社会福祉基礎構造改革を経て、2000年の介護保険法に始まる契約制度は、基本的には民間が主となり、地域で福祉サービスを行うことを前提にしています。

ですから、介護保険法と老人保健法ではそもそも発想が全く異なるのです。そして、職名だってもちろん分けられています。
介護支援専門員はもちろん、介護保険法に規定されており、一般にはケアマネージャーと呼ばれます。

選択肢3 〇 選択肢4 × 選択肢5 ×

この3つの職名は、社会福祉関係の任用資格と呼ばれます。
「任用資格」っていうのが、教科書を見てもなかなかわかりにくくて、頭を抱える人が少なくありません。大事なのは、上述した「福祉六法体制のころまでは、社会福祉は行政がやるものだった」という、この発想を前提として知っておくことです。
「行政がやる」っていううことは、つまりが誰がやるんですか?もちろん、公務員です。とはいえ、公務員というのは同じ職種にずーっと居続けるのではなく、2~3年で職種を転々と移動していきながら、ジェネラリストとして育てていく、これが行政組織の人材育成の考え方なわけです。すると、社会福祉も、同じ公務員がずーっとし続けるという発想がなかったのです。だから、公務員として、その職種についている(=任用されている)ときだけスペシャリスト(=資格所持者)と名乗れる。これが任用資格という考え方であり、最後に「士」ではなく、「司」がつくものが多いです。

<社会福祉関連の主な任用資格とその根拠法>
社会福祉法
社会福祉主事
福祉事務所(市町村・都道府県)に所属〇児童福祉法
児童福祉司
児童心理司
児童相談所(都道府県・指定都市)に所属

身体障害者福祉法
身体障害者福祉司
身体障害者更生相談所(都道府県)に所属

知的障害者福祉法
知的障害者福祉司
知的障害者更生相談所(都道府県)に所属

ですから、授業で知的障害者福祉司の話をすると「知的障害者福祉司になりたいんですけど、どうやったらなれますか」とか聞かれることがあるのですが、まずは都道府県に公務員として採用されない限りは原則なれない、ってことになります。ですから「公務員採用試験を勉強しないとなれないよ」なんてことを言うわけです。

一方で、「相談支援専門員になりたいんですけど、どうやったらなれますか」と聞かれた場合にはどうでしょうか。相談支援専門員ってどんな資格ですか?これは、障害者総合支援法の資格です。つまり契約制度を前提にした資格であり、民間人でも取得できる資格です。ただし、一定の現場経験を経なければそもそも研修は受けられないので、「まずは障害者の支援の現場にいくことだよ」なんて伝えるわけです。
ここにあげたものは、基本中の基本。すべて覚えておきましょう。

 

正解 5

 

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