ソーシャルワークから見た「多職種連携の観点による社会福祉士の対応」

13相談援助の基盤と専門職
今回のポイント
日常生活自立支援法の実施主体とその主たる内容を知る
・問題文にある「この時点での」という表現の意味を知る。

問題97 事例を読んで、多職種連携の観点から、この時点でのT市の地域包括支援センターのB社会福祉士の対応として、適切なものを2つ選びなさい。〔事例〕 担当地区の民生委員のCさんより、一人暮らしのDさん(80歳、男性)のことでT市の地域包括支援センターに相談の電話があった。Dさんは3か月ほど前に妻を亡くした後、閉じ籠もりがちとなり、十分な食事をとっていないようである。Dさんはこれまで要支援・要介護認定は受けていない。B社会福祉士がDさんの下を訪ねたところ、Dさんは受け答えはしっかりしていたが、体力が落ち、フレイルの状態に見受けられた。
1 法定後見制度の利用を検討するため、弁護士に助言を求める。
2 サロン活動の利用を検討するため、社会福祉協議会の福祉活動専門員に助言を求める。
3 日常生活自立支援事業の利用を検討するため、介護支援専門員に助言を求める。
4 介護老人福祉施設への入所を検討するため、医師に助言を求める。
5 栄養指導と配食サービスの利用を検討するため、管理栄養士に助言を求める。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

問題95と同じ「事例・適切」問題ですね。やり方は同じですが、先にも書いたように、事例問題は、「確実に正解に導ける」そんな解き方、プロセスにこだわるべきゆえ、再度、解き方をまとめますね。

<確実に正解に導ける事例問題の解き方>
大前提:〇はつけない。選択肢につけるのは×か△のみ。
まず、100%まちがいといえるものだけに×をつける。
1%でも可能性があれば残す!
残った△の選択肢から、優先順位1位の選択肢に〇をつける
(優先順位は問題文から読み取る:原則は「事例の後、早くやる順」)

選択肢を見て行く前に、問題のタイトルである「多職種連携」について、ちょっとだけ。少なくない人が「『他』職種連携」と書いてしまいます。この書き方は「社会科学としてのソーシャルワーク」を前提にするとありえません。なぜでしょうか。私が「ソーシャルワーカーとして『他』職種の弁護士とつながる」ことはありますし、表現としても間違っていません。しかし、「社会科学としてのソーシャルワーク」を前提にした場合、あらゆる事例は本人を中心に据えて描きます。「私=専門職」を中心には据えません。本人が中心であり、多職種が連携して支えあうことでどんな人でも地域で生きていけるようにする、という発想がになるのです。だから、「多」職種連携じゃなきゃダメなんです。だから、選択肢1つ1つが一つの職種しか示していませんから、「他」職種連携だという話にはならないのです。この問題の前提がそもそも「社会科学としてのソーシャルワーク」だからです。

そのうえで。

①100%誤りといえるものだけに×をつける。※1%でも可能性があれば残す!

100%×は選択肢3

×3 まず日常生活自立支援事業を知っていなければいけませんね。

日常生活自立支援事業
認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行う
〇実施主体:都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)

判断能力が不十分かどうかに関係なく、そもそも日常生活自立支援事業が都道府県社協が実施主体で、窓口業務も市町村社協が行う以上、ケアプランを立てるスペシャリストである「介護支援専門員」に助言を求めるという発想はあり得ません。

②残った△の選択肢から、優先順位1位の選択肢に〇 (優先順位の原則は「事例の後、早くやる順」)

さて、残ったのが選択肢1、2、4、5ですね。

事例問題はほとんどの場合が、「事例の後、早くやる順」で正解を導きますが、まれにそうではないこともあります。ただ、この問題文のように「この時点での」といった表現があれば、「早くやる順」で確定です。

選択肢4に、①の時点で×をつける人がいますが、私は残します。なぜなら、介護老人福祉施設に行くために必要な条件として介護度(原則として要介護3~5)があり、今は、まだ要支援要介護の判定を受けていない以上、その判定を受けるうえで、主治医の意見書が必要になることがあるわけですから。まぁ、確かに介護老人福祉施設への助言としては、間接的かなと私も思います。思いますが残しておくんです。なぜなら、自分の何となくの実感、つまり、事例から離れた現場感覚で何となくで解くことに慣れてしまうと、必ずや事例を見ないで、自分の現場感覚で×や〇と判断してしまう、そんな瞬間が出てくるからです。
事例適切問題は9割以上いや10割の正解をも目指せる問題形式なのですから、解き方にこだわるべきだ、というのが私の考え方です。

さて、こうして残った選択肢1,2,4,5ですが、じゃあどれから先に助言を求めるか、という観点で選択肢を眺めててみましょう。

すると、「Dさんは受け答えはしっかりしていた」以上は、選択肢1の法定後見制度もまだ先の話であり、「これまで要支援・要介護認定は受けていな」い状態で、「体力が落ち、フレイルの状態に見受けられた」ものの、だからと言って、地域生活を行ってる高齢者を介護老人福祉施設という選択肢に結び付ける発想も「地域を基盤とする相談援助」を行う社会福祉士としてありえない。どちらも選択肢としてありつつも、まだ先にやるべきことはありそうだ。

ただ、先ではありつつも、今の現状を知り、今後の方針を立てたいところではある。そのためには、支援を行いつつ、現状を多職種連携で多様な専門家の視点から把握するような体制を現時点では作っておきたいところである。

すると、「Dさんは3か月ほど前に妻を亡くした後、閉じ籠もりがち」という点から、サロンで地域住民等とつながるあり方を模索(選択肢2)し、「十分な食事をとっていないようである」という点から、栄養の観点から管理栄養士から助言をもらい(選択肢5)つつ、今後、地域での一人暮らしが厳しくなったところで、選択肢1や選択肢4という選択を視野に入れる、という順番になるだろう。

正解 2と5

 

タイトルとURLをコピーしました