・横断調査と縦断調査、この二つがよって立つ視点を知る
・そのうえで、パネル調査の特徴を整理する
問題87 横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 縦断調査とは、一時点のデータを収集する調査のことをいう。
2 横断調査で得られたデータを、時系列データと呼ぶ。
3 パネル調査とは、調査対象者に対して、過去の出来事を振り返って回答してもらう調査のことをいう。
4 パネル調査は、横断調査に比べて、因果関係を解明するのに適している。
5 横断調査では、時期を空けた2回目以降の調査で同じ調査対象者が脱落してしまうといった問題がある。社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
社会調査には量的調査(=数値化を目的とする)と質的調査(=数値化を目的としない)があります。これは先の第33回問題86でやりました。ただ、それと横断調査、縦断調査はまた別の視点です。ですから、量的調査には縦断調査も横断調査もありますし、質的調査にも縦断調査も横断調査もあるのです。
選択肢1 × 選択肢2 ×
では、縦断調査と横断調査とは、どのような視点によるどのような違いなのでしょうか。それは時間軸の視点の違いです。
(1)横断調査:ある一時点における調査
→例 AさんとBさんとCさんの関係(=相関関係)を知りたい
(2)縦断調査:一定の調査対象に、時間をへだてた2つ以上の時点で調査
→例 過去のAさんと今のAさんの時間的変化(=因果関係)を知りたい
選択肢3 × 選択肢4 〇 選択肢5 ×
横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
3 パネル調査では、調査の回数を重ねるにつれてサンプル数が増加する。
調査対象者を固定化(=パネル化)し、期間をおいて、同じ質問を繰り返す調査
→時間の経過によって、結果がどう変化していくのかを比較する
第27回問題86
横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
2 パネル調査における「パネルの摩耗」とは、第2回、第3回と回を重ねるごとに回答者数が減っていくことをいう。
パネル調査はソーシャルワークという観点から大事な調査方法です。であればあるほど、その調査のデメリットである「パネルの摩耗」はしっかり押さえておかないと、不用意にパネル調査をやってしまうことになります。だからこそ、国家試験問題作成者も、この第27回では、「パネルの摩耗」を〇の選択肢に入れて、ちゃんとわかっているかどうか確認しようとしているのです。
ソーシャルワークという観点からすると、5年10年という単位でケースや地域をまなざしていくことが必要になります。すると、パネル調査も例えば1年ごとの同じ調査を5年や10年という単位でやりたいところですが、年々調査対象者が減っていきます。例えば引っ越したとか、いなくなったとか、もう調査を受けたくないと本人から言われたとか、そんな形でパネル調査の調査対象者は年数がたてばたつほど減っていくのです。これが「パネルの摩耗」です。
選択肢4の説明は端的でよい説明なので、そのまま覚えてしまいましょう。
=縦断調査において、第2回・第3回と回を重ねるごとに回答者数が減っていくこと
だからといって、途中で新しく調査対象者を加えるようなことをすることはできません。
10年での変化を見ようとしているのに、一部の人は5年しか調査していないとしたら、比較検討できないからです。
そして、この「パネルの摩耗」について言っているのが、選択肢5だとわかるでしょうか。ですから、選択肢5の文章の主語が「横断調査は」になっていますが、正しくは「パネル調査は」になります。
正解4