ソーシャルワークから見た「ケアマネジメントの過程」

14相談援助の理論と方法
今回のポイント
・ソーシャルワークとケアマネジメント、何がどう違うか理解する。
・国試から学ぶ学び方を改めて確認する。

問題111 ケアマネジメントの過程に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 アセスメントとは、クライエントや家族の意向に沿ってニーズを充足する方法を決定することである。
2 ケアプランの作成とは、ケアマネジメントの対象となるかどうかを確認することである。
3 ケアプランの実施とは、ケアマネジメントについて説明をし、利用意思を文書等により確認することである。
4 リファーラルとは、支援が望まれると判断された人々を、地域の関係機関等が支援提供機関などに連絡し、紹介することである。
5 スクリーニングとは、一定期間の後に支援経過と結果を全体的に評価することである。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

「ケアマネジメントの過程」がタイトルです。
ケアマネジメントの過程って、ソーシャルワークの援助プロセスと、どう異なりますか?

そのまえに、ソーシャルワークの援助プロセスってわかります?
もちろん、国試はすでに教えてくれてるんですよ。問題105で。
インテーク→アセスメント→プランニング→インターベンション→モニタリング→エヴァリュエーション→ターミネーション→アフターケア

ってやつですよ。これは、聞けばみんな知ってる。

じゃあ、これとケアマネジメントの過程って何が違うの?
ここで知るべきは、ソーシャルワークとケアマネジメントの関係。ソーシャルワークという大きな概念があり、そのなかにケアマネジメントというより具体的な概念が内包されている(内側にある)と思えばいいです。

ケアマネジメントのほうが具体的って何がどう具体的なの?
ケアマネジメントという概念は、具体的なサービスと結びつけるときの手法のことです。
具体的なサービスとは、例えば介護保険法のサービスとか、例えば障害者総合支援法のサービスとか。ケアマネジメントという概念は、介護保険法のサービスだけに限定しませんよ。一番最初にケアマネジメントという概念を具体的に制度に乗っけたのが「介護保険法」だったので、どうしても、ケアマネジメントというと介護保険と思っちゃう人が多いですけどね。

すると、「ソーシャルワークの援助プロセス」と「ケアマネジメントの過程」って、どんなソーシャルワークにも当てはまる共通のプロセス(=抽象的なもの)と、具体的なサービスに結び付ける具体的な過程の違いであり、流れそのものは同じなんです。

そこまで整理して、それでは選択肢を見てみましょう。

選択肢1 ×

アセスメントって言い方は、ソーシャルワークの援助プロセスとも同じですね。

アセスメントとは、私流の言い方をすると、インテークで作った関係を踏まえて、クライエントとソーシャルワーカーがいっしょになって目標設定をする、そのための情報収集や分析です。

すると、まず「必ずしもクライエントの意向に沿う」とは言えません。もちろん、ソーシャルワークの援助としては、本人の意向に沿うことは最大限尊重されます。ただ、具体的な場面を想定したケアマネジメントで「意向に沿う」なんて断言し、かつ、それで「方法を決定」なんて、そんなこと言えません。
また、「方法を決定」するのは、ソーシャルワークの援助プロセスにおける「プランニング」の段階であり、ケアマネジメントでは選択肢2の「ケアプランの作成」の段になります。

選択肢2 ×

選択肢1の解説で確認したように、「ケアプランの作成」はソーシャルワークの援助プロセスの「プランニング」にあたります。

一方、この選択肢の説明である、「ケアマネジメントの対象となるかどうかを確認すること」とは、ソーシャルワークの援助プロセスにおける「インテーク」にあたります。

ズレてますね。ということで×ですね。

選択肢3 ×

「ケアプランの実施」とは、ソーシャルワークの援助プロセスにおける「インターベンション」です。一方で、選択肢にある「ケアマネジメントについて説明をし、利用意思を文書等により確認すること」とは、ソーシャルワークの援助プロセスにおける「インテーク」です。

ズレてますね。ということで×ですね。

選択肢4 △

「リファーラル」について知らない人、結構いると思います。載ってない教科書もあるようですし。

その場合には、知らないんだから×にも〇にもしないで、△で残して、他の選択肢を判断し、そのうえで、残った選択肢で考えるべきです。

とりあえず、ここは△で処理してみることにしましょうか。

選択肢5 ×に近い△

「スクリーニング」についても、「リファーラル」同様、知らない人が結構いるでしょうね。
ただし、「一定期間の後に支援経過と結果を全体的に評価すること」はソーシャルワークの援助プロセスにおける「エヴァリュエーション」です。

エヴァリュエーションを別の表現できると、ただの△ではなく、×に近いか〇に近いか、少しヒントになるんですが、わかりますか?「再アセスメント」です。すると、これって、選択肢1の「アセスメント」に対応するんじゃないかって推測できませんか?

なぜなら、国試は入れ子で説明するが定番だってことは、国試の過去問3年分ぐらいやればわかるはずなんです。

すると、選択肢5 は、×に近い△で、選択肢4 を○に昇格しておしまい。

実際に本番で解いた人はこんな感じで正解を導くんでしょうね。

ただ、私達は、国試からソーシャルワークを学ぶんですから、もう少し向き合って考えてみましょうか。

選択肢の頭文と尾文を適切に対応させてみると。

<対応文>
〇選択肢1頭「アセスメント」選択肢5尾「一定期間の後に支援経過と結果を全体的に評価すること」
〇選択肢2頭「ケアプランの作成」選択肢1尾「クライエントや家族の意向に沿ってニーズを充足する方法を決定」

<明らかに対応文なし>
×選択肢3頭「ケアプランの実施」対応する尾文なし

残りは?
<頭文>
選択肢4頭「リファーラル」選択肢5頭「スクリーニング」
<尾文>
選択肢2尾「ケアマネジメントの対象となるかどうかを確認すること」
選択肢3尾「ケアマネジメントについて説明をし、利用意思を文書等により確認すること」
選択肢4尾「支援が望まれると判断された人々を、地域の関係機関等が支援提供機関などに連絡し、紹介すること」

尾文で残った3つを読むと、これ、全てがソーシャルワークの援助プロセスの「インテーク」で行われることだと気づくはず。

インテークでは関係を作るのはもちろん大事ですが、その中で、①緊急性や支援対象になり得るかの判断をし、②対象になりえるなら、ソーシャルワークでできることなど説明したうえで、③適切な機関につなぐわけです。

そして、インテークのなかでも、①の作業をスクリーニング、③の作業をリファーラルと呼ぶのです。

と、国試が教えてくれてます。

正解 4

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