ソーシャルワークから見た「障害学生支援室のソーシャルワーカーの対応」

14相談援助の理論と方法
今回のポイント
事例問題の解き方を再確認
根拠があるかないか、問題文をを丁寧に確認

問題107 事例を読んで、Z大学の障害学生支援室のCソーシャルワーカー(社会福祉士)のDさんへのこの時点での対応として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Z大学3年生のDさん(21歳、男性)は入学前に交通事故に遭い、日常的に車いすを使用している。Dさんの入学以来、Cソーシャルワーカーは面接を行い、必要な支援を提供してきた。ある日、Dさんが卒業後の生活について相談したいと障害学生支援室を訪れた。「就職活動をする時期になり、卒業後は一人暮らしをしたいと両親に伝えました。両親は、最初は反対していましたが、最終的には賛成してくれました。でも、実際に将来のことを考え始めたら様々なことがとても不安で、就職活動が手につきそうにありません」と、Dさんは思い詰めた表情で話した。
1 両親にはこれ以上心配を掛けないよう、自分で解決するように伝える。
2 CソーシャルワーカーがDさんにとって良いと考える具体的な就職先を伝える。
3 不安について具体的に話すよう促し、解決すべき問題を一緒に整理する。
4 障害者の自立生活や就職活動の経験者がいる自助グループへの参加を提案する。
5 就職して一人暮らしをすることは十分可能なので、自信を持つように伝える。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

大学の障害学生支援室のソーシャルワーカーの対応なんてタイトルで、合理的配慮が2021年の障害者差別解消法の改正で、合理的配慮が、民間事業者にも義務になったことなんか踏まえると、まさに時流に乗った問題ですね。

さて、解いてみますか。その前に、改めて事例問題の解き方を確認しましょう。

<確実に正解に導ける事例問題の解き方>
大前提:〇はつけない。選択肢につけるのは×か△のみ。
まず、100%まちがいといえるものだけに×をつける。
1%でも可能性があれば残す!
残った△の選択肢から、優先順位1位の選択肢に〇をつける
(優先順位は問題文から読み取る:原則は「事例の後、早くやる順」)

①100%誤りといえるものだけに×をつける。※1%でも可能性があれば残す!

100%×は選択肢1と選択肢2と選択肢5

問題95でも確認しましたが、Cソーシャルワーカーとだけ言わず、わざわざ社会福祉士とつけているのは、「社会科学としてのソーシャルワーク」の見方・考え方を踏まえていることを示しています。

すると、
選択肢1は、本人が相談に来ていて、自分だけで解決できる根拠はどこに提示されていますか?親が賛成した手前、自分だけで解決したほうがいいという発想はありえても、自分だけで解決できる根拠がないのであれば、それは社会科学を踏まえたソーシャルワーカーの態度とは言えないでしょうね。

選択肢2 問題文でわざわざ「この時点での対応」と限定をつけています。事例からCソーシャルワーカーとDさんは良好な関係であることが強く推測されますが、とはいえ、今回の相談はDさんから初めて聞くケースの相談なわけです。それなのに、希望も何も聞かず、具体的な就職先を伝えてしまうことで、その後の展開がCソーシャルワーカーが主導する形になりかねません。

選択肢5 事例の「この時点」では、「就職して一人暮らしをすることは十分可能」とする根拠は何ら明確ではありません。エンパワメントのつもりだとしても、根拠なき発言は社会科学とは言えないだけでなく、信頼関係を壊しかねません。

②残った△の選択肢から、優先順位1位の選択肢に〇をつける。

この問題は「2つ選べ」で、選択肢は3と4しか残っていない。ということで、この二つが正解。

正解 3と4

【お勧めの関連入門本】
障害学生支援など、個別具体的な話になるほど、個別具体的な入門書がいいと思う人がいますが、私は逆だと思っています。これをすれば批判されない、これさえやれば訴えられない、そんな不安から逃れるために自分で判断しないあり方を求める。そんなあり方からソーシャルワークは脱しなければなりません。こういう具体的な例であればあるほど、根本に立ち戻る、そのような本の読み方をしたいものです。
このケースの根本とは?やはり合理的配慮に立ち戻りたい。ということで、合理的配慮、それもこうすれば合理的配慮になりますよ的な本じゃなく、合理的配慮の思想、考え方の読みやすい入門書をお勧めします。

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