・生活保護法の原理原則の、実際の適用の仕方を、事例を通じて学ぶ
・教育扶助が義務教育課程限定であることを確認する
問題65 事例を読んで、R市福祉事務所のK生活保護現業員が保護申請時に行う説明に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん(39歳、男性)は、妻(36歳)、長男(15歳、中学生)及び次男(4歳、幼稚園児)と暮らしている。Lさんは精神障害者、妻は身体障害者であり、一家は夫妻の障害基礎年金とLさんの就労所得で生活してきた。これまでLさんはパートタイム就労を継続していたが、精神疾患が悪化して退職し、夫妻の年金だけでは生活できなくなった。Lさんは、退職に際して雇用保険からの給付もなかったので、生活保護の申請を行おうとしている。
1 生業扶助における母子加算を受給できることを説明した。
2 二人の子に対しては、それぞれ教育扶助を受給できることを説明した。
3 長男が高校に進学すれば、教育扶助から高等学校等就学費を受給できることを説明した。
4 夫妻が共に障害基礎年金を受給していても、生活保護の申請を行うことはできると説明した。
5 Lさんに精神疾患があるとしても、就労が可能である場合、生活保護の申請は行えないことを説明した。社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
問題64で、生活保護の原理原則を確認したわけですが、それを踏まえた実践として、事例問題が出題されています。このように、生活保護法はとても出題されやすく、かつ、しっかり原理原則さえ押さえておけば解ける、易しい問題ばかりです。
生活保護法は得点源です!!
選択肢1 ×
「母子加算」はその名の通り、母子・父子世帯といった「ひとり親世帯」の子の養育に対する加算です。Lさんは一人親世帯ではありませんので、当然ながら、要件を満たしません。
選択肢2 ×
教育扶助については、問題63で解説したように、義務教育に関わってお金が必要になった場合に認められるものです。もちろん、義務教育とは小・中学校であり、幼稚園は含まれませんので、次男は対象外です。
選択肢3 ×
選択肢2と連動した問題ですが、教育扶助は義務教育の期間限定ですので、高等学校は対象外です。じゃあ、選択肢3にある「高等学校等就学費用」はどこから出るかというと、これが「生業扶助」になり、技能習得費という考え方によって対象になります。ですから、高等学校の費用が無条件に出るというのではなく、技能習得と同様に、高等学校卒業が「自立助長」に効果的と認められれば、対象になるということになります。
選択肢4 〇
問題64の解説にも書いたように、「保護の補足性の原理」(他法他施策優先)はとにかく出題が多く、かつ、〇の選択肢としても狙われやすいのです。
なぜなら、ソーシャルワークの実践上、とても大事な考え方だからです。だから、なんと問題64に続き、この問題65でも補足性の原理に関するこの選択肢が正解です。
二問連続で同じ「保護の補足性の原理」がしっかり分かっていさえすれば、簡単に正解が導ける、そんな問題にしているのです。
ということで、何度も言いますが、「補足性の原理」は大事、だからしっかり覚えましょう。
「保護は、生活に困窮する者が、その利用しうる資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」(生活保護法第4条)
選択肢5 ×
これもちょっと間違いやすいですかね。丁寧に読まないと〇をつけてしまいがちです。選択肢4と絡めて、いかにも「保護の補足性の原理」について聞いているように思えますが、違いますよ。「保護の補足性の原理」は保護の対象になるかどうか、そこの観点からの原理です。
この選択肢で問われているのは「生活保護の『申請』」なんです。生活保護の「対象」になるかどうかじゃない!のです。
すると、就職の可能性の有無なんか関係ないのです。本人に保護申請の意思があれば、誰にだって申請する権利はあるのです。
かつては水際作戦などと言われ、いろんな理屈をつけて申請をさせないなんてことが特定の福祉事務所で行われて問題になりました。ですので、そのようなことがないよう、通知で改めて保護申請の意思があるすべての人に申請する権利があることが確認されています。
正解 4