ソーシャルワークから見た「生活保護法の原理・原則」

09低所得者に対する支援と生活保護制度
今回のポイント
生活保護法の原理原則は、無条件に、とにかくそのまま覚える
選択肢は、どの部分も勝手に読み飛ばさず、全文丁寧に読む必要性を理解する

問題64 生活保護法が規定する基本原理・原則に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 すべて国民は、この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り、この法律による保護を受けることができる。
2 必要即応の原則とは、要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において保護を行うことをいう。
3 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われる。
4 保護の決定は、生活困窮に陥った原因に基づいて定められている。
5 行政庁が保護の必要な者に対して、職権で保護を行うのが原則とされている。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より

さて「生活保護法」です。

この「低所得者の支援と生活保護制度」という科目では、生活保護法の概要」という形で、例年、生活保護関連が単独問題として3~4問出題されます。
ただし、だいたい出題されるところは決まっているのです。もちろん、細かい仕組みはいくらでもあるのですが、社会福祉士という資格は、福祉事務所の現業員の資格ではありませんから、ソーシャルワークという観点からみた生活保護法の大事なところしか出ません。それで、3~4題出題されるのですから、得点源になるところです。

ということで、生活保護法で押さえるべきところをしっかり押さえましょう
では、まず最初に押さえるべきはどこですか?と聞かれたら、もちろん「生活保護法の原理・原則」です。すべてはここからです。
それでいて、国家試験でもしょっちゅう問われています。しっかり押さえましょう。

生活保護法の原理
国家責任の原理:国民の最低生活保障を国が責任もってやる!
無差別平等の原理:経済的状態だけで判断!
最低生活の原理:健康で文化的な最低限度の生活の保障!
保護の補足性の原理:他法・他制度が優先だよ!〇生活保護法の原則
申請保護の原則:申請保護が前提 ※例外あり=職権保護
基準及び程度の原則:不足分を補う程度で
必要即応の原則:実際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行う
世帯単位の原則:世帯を単位とする ※例外あり=世帯分離

選択肢1 ×

この選択肢は引っ掛かった人多いかもしれませんね。

選択肢を
「すべて国民は、・・・、この法律による保護を受けることができる。」
なんて読んじゃってたら、〇になっちゃいますね。

こういう自分のわかるところや都合のいいところだけ読んで判断してはダメですよ。
五肢のそれぞれが一文から二文程度しかないのですから、細かい部分までしっかり判断根拠として読み切ることが大事です。

「地方公共団代の条例で定める要件」って何ですか?
最後のセーフティネットである生活保護法で、地方公共団体の条例の要件によってダメなんて言われることがあるんじゃ、最後のセーフティネットとは言えませんよ。
原理にありますが、国家の責任で無差別平等にやるんです。
特に、無差別平等という観点でいえば、地方公共団体の条例でいい悪いが決まれば、どの地方にいるかによって、生活保護が受給できるかどうかが変わるってことになるじゃないですか。そういうことを「差別」というのです。

無差別平等の原則
「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」(生活保護法第2条)

選択肢2 ×

これは、見ただけですぐ「基準及び程度の原則だ!」とわからないとダメです。それぐらい、先に挙げた原理・原則をしっかり覚えてください。

選択肢3 〇

この「保護の補足性の原理」は、国家試験では一番出題されやすいです。
生活保護法の実際の運用を考えるときの大事な考え方だからです。

保護の補足性の原理
「保護は、生活に困窮する者が、その利用しうる資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」(生活保護法第4条)

選択肢4 ×

これも選択肢1の「無差別平等の原理」から×と言えますかね。
選択肢1の解説に挙げた条文の「この法律の定める要件を満たす限り」ってところで、保護に際しては、原因は問わず、生活に困窮しているかどうかという経済的条件のみに着目するってことになります。

選択肢5 ×

これは「申請保護の原則」で×ですね

申請保護の原則
「保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする」(生活保護法第7条)

申請が原則であり、職権保護が例外です。
職権保護とは、ただし書きにある「要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる」を指すものです。

正解 3

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