問題31 次のうち、働き方改革とも関連する「労働施策総合推進法」の内容の説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 国は、日本人の雇用確保のため不法に就労する外国人への取締りを強化しなければならない。
2 国は、子を養育する者が離職して家庭生活に専念することを支援する施策を充実しなければならない。
3 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、必要な措置を講じなければならない。
4 国は、労働者が生活に必要な給与を確保できるよう労働時間の延長を容易にする施策を充実しなければならない。
5 事業主は、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者について、求職活動に対する援助その他の再就職の援助を行うよう努めなければならない。
(注) 「労働施策総合推進法」とは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(旧雇用対策法)のことである。社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
二択パターンは、第33回では、この問題31が最初ですね。
二択は難しい、という人が少なくありませんが、見方・考え方を変えればいいのです。
五肢択一もしくは五肢二択という、この国家試験上のゲームは、100パーセントまちがっている選択肢をみつけることのほうがやりやすいものになっています。「正しい」文章を作るって難しいです。なぜなら、いろーんな解釈がありますからね。「正しい」っていうのはどんな解釈によろうが一致して正しいってのが「正しい」ですから。すると、×の選択肢で作られている文章とは、「間違い」の文章というよりも、「正しくはない」文章なんです。
もう少し精確にならば、×の選択肢には、「100パーセント間違いの文章」と「正しくはない文章」の二種類があるんです。
(1) 100パーセント間違いの文章 → ×マークをつける
(2) 正しくはない文章 → △にして残すが、×に近い△マークを自分で作っておく
そして、三角で残った文書のなかで、問題によって優先順位となる条件を見抜いて、二択であれば、その条件から優先順位1位と2位を〇に採用するのです。
優先順位ってなんだ?と思われるでしょうから、実際この問題でやってみましょう。
この問題でのタイトルにもなっている「労働施策総合推進法」ですが、これが2019年に改正されて、ハラスメント対策が強化されたことぐらいは知っていれば、この問題は解きやすくなります。この辺をもって、社会福祉士の国家試験の勉強をする際には、時事ネタも出てくるから、新聞をまめに読んでいたほうがいい、なんて話がおすすめの勉強法として出てくるのだと思います。ただ、これは社会福祉というよりも労働法制の法律です。そこまで覚えていないとソーシャルワーカーとして失格ですよ、とまで言えるかどうか。この問題を見ると、そこまでは言っていないなと。私は思います。
なぜか。問題文に、ちゃんとヒントをくれているのです。問題のタイトルは、正式には「働き方改革とも関連する『労働施策総合推進法』」ですね。つまり、「働き方改革」なる形容詞がわざわざつけてあるわけです。つまり、この法律やその改正までは知っていなくても、働き方改革ぐらいは知っておいてね、と国家試験は言っているわけです。そして、働き方改革のノリ、そんなものがわかっていれば解けるような問題になっているのです。
じゃあ、働き方改革のノリって何か?これは、この問題の前の問題の問題30でもやりましたが、1990年代ぐらいを境に日本は転換期を迎え、2000年前後に制度を大幅に変えたわけです。それは社会福祉だけではなく、あらゆる制度を巻き込んだものだってことは、問題30の住宅政策をみてもわかるじゃないですか。それ踏まえての問題31であり、労働政策について問われているわけです。住宅政策では、「住宅建築」バンバンやっていこう、日本というパイが大きくなればみーんな幸せになるんだから、ってノリで、日本全体でみて政策を打っていたのが1980年代ぐらいまで。それがもううまくいかなくなり、1990年代ごろからは一人ひとりに焦点を合わせていく、そういう政策になっていくわけです。社会福祉や住宅だけじゃないですよ。例えば、教育でも、2000年代に入って特殊教育から変わった特別支援教育もそうです。障害児だけ特殊枠でという発想を変えて、あらゆる人を対象にし、障害あるなしに関係なく、一人ひとりの児童に焦点を合わせるわけです。
じゃあ、労働政策で2000年代に出てきた「働き方改革」って何ですか?と言われたら。今の流れを踏まえて、そのノリを端的に言うならば、労働者一人ひとりのより良い働き方を目指す改革ってことになるでしょう。
それぐらい踏まえたうえで、さぁ、×と△、×に近い△を使いながら、選択肢を見ていきましょう。
選択肢1 ×に近い△
この法律について細かいことは知らないという体にしましょう。ただ、「働き方改革」は何となくわかっているわけです。そして、外国人の不法労働を取り締まるって発想が、「働き方改革」にあるかどうかって考えると、ないですよね。だから、法律にそんなことが書いているか知らないので、△にせざるを得ませんが、やっぱり×に近い△でしょうね。
選択肢2 ×に近い△
これもこの法律については知りませんので三角ではありますが、問題29でやったように、男女共同参画ってこのノリも90年代ごろからさらに出てきて、2000年代に制度も作られ政策的に誘導されていることが確認できたわけじゃないですか。子を養育する者も現状としてほぼ女性がいまだに担っている部分が大きく、それら女性に対して、家事に専念させようとする発想が「働き方改革」に含まれるなんてありえないでしょう。
選択肢3 〇に近い△
「働き方改革」が日本全体ではなく、労働者一人一人に目を向けるんだ、ってことさえ分かっていれば、「労働者の就業環境が害されることのないよう」なんてのはぴったりの表現ですね。これがハラスメント対策を企業に求める、2019年の改正を反映した文章ですが、それを知らなくても、「働き方改革」のノリだけ知っていれば、これを〇に近い△として処理はできるのです。
選択肢4 ×に近い△
これも、労働者一人一人の良好な働き方を目指す「働き方改革」に対して、お金が足りなければ労働時間を延長していいよ、っていうこの発想は、明らかに逆行してる考え方だって思いませんか?これもまた、法律は知らなくても、やはり×に近いと判断できるはずです。
選択肢5 〇に近い△
昔の、いわゆる日本全体しか見てなかった頃の労働政策では、労働者の離職もっといえば転職に対して、勤めている企業に協力させるなんて発想はあり得なかったでしょうね。でも、「働き方改革」って考え方であれば、一人一人の生活の状況の変動に応じて、その人に合った職をみつけるために、雇用する企業でさえも協力するってノリは、まさしく「働き方改革」のノリから出てくる考え方だなって思えるでしょう。
このように、選択肢3と選択肢5を確信もって〇をつけられなくても、選択肢1、2,5は△ではあれど、明らかに「働き方改革」に合ってないんです。ということで、残った選択肢3と5が正解で、おしまい、という問題です。
正解 3と5