ソーシャルワークから見た「高齢者における薬害有害事象の発生予防や発生時の対処方法」

今回のポイント
・高齢者は代謝・排泄機能が低下し、副作用リスクが高い。
・薬害を防ぐ最大の方法は「定期的な処方内容の見直し」。

問題2 高齢者における薬害有害事象の発生予防や発生時の対処方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 服用法を複雑にする。
2 定期的に処方内容を見直す。
3 若年者と同じ投与量にする。
4 投与薬剤の数はなるべく8剤以下にする。
5 新規症状が出現した場合に薬剤を追加する。

社会福祉士国家試験 第37回(2025年)より解説

薬をたくさん飲んでいるお年寄りを見かけたことはありますか?
食後に一包化された薬袋を開くと、白・赤・青・錠剤・カプセルがずらり。まるで小さな薬局を自宅に持ち歩いているような人も少なくありません。

ここで立ち止まって考えましょう。
薬は「効く」だけでは終わらない。
必ず「副作用」という裏の顔を持っています。高齢者は代謝や排泄機能が衰えているため、若い人より副作用が出やすい。さらに多剤併用(ポリファーマシー)は、薬同士の相互作用を引き起こすリスクを高めます。

選択肢2 〇

だからこそ「定期的な処方の見直し」が正解です。
医師・薬剤師・看護師・ソーシャルワーカーが協力し、「本当にこの薬は必要か?」と問い直す。減らせるものは減らし、やめられるものはやめる。薬を“足す”ことより“引く”ことの勇気が、現場には求められています。

さて、他の選択肢も論理的かつ丁寧に考えてみましょう。

選択肢1 ×

「服用法を複雑にする」
冗談でしょうか。複雑にすれば飲み間違い・飲み忘れが増えるだけ。高齢者にとって「シンプルさ」こそ命綱です。

選択肢3 ×

「若年者と同じ投与量にする」
高齢者の身体は若者のミニチュア版ではありません。腎機能・肝機能の低下を無視して同量投与すれば、薬害一直線です。

選択肢4 ×

「投与薬剤の数はなるべく8剤以下にする」
“8”ってどこから出てきたのでしょう? 確かに「5剤以上」で副作用リスクが急上昇すると言われますが、数値よりも大事なのは「その人に必要かどうか」。8という根拠の薄い数字にすがるのは危険です。

選択肢5 ×

「新規症状が出現した場合に薬剤を追加する」
これこそ薬害の温床。新しい症状は副作用かもしれません。
にもかかわらず薬を足してしまえば、副作用の副作用…終わりのないスパイラルです。

結局のところ、薬害を防ぐキーワードは “見直し” に尽きます。
医療・介護現場で「この人は本当にこんなに薬を飲む必要があるのか?」と問い直すこと。
そこにこそ、私たちが高齢者に寄り添うプロフェッショナルとしての責任があるのです。

国家試験対策として「2が正解」と覚えるのは簡単です。
でもそれを実際の現場で“薬を減らす勇気”として実践できるかどうか――そこが、学んだ知識を「仕事の力」に変えられるかどうかの分かれ目です。

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