・ネットワークについて、ネットワーキングという概念を踏まえ、理解する
・ソーシャルワークの方法論のデメリットを敢えて正解にする意図を考えてみる。
問題112 次のうち、ネットワークに関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ジェノグラムは、クライエントを取り巻く人間関係や社会環境における資源のネットワークを可視化したものである。
2 地域で構築される個別の課題に対する発見・見守りネットワークは、専門職を中心に構成される。
3 ラウンドテーブルとは、ボランティアグループのリーダーが参加する活動代表者ネットワークである。
4 多職種ネットワークでは、メンバーができるだけ同じ役割を担うようにコーディネートする。
5 個人を取り巻くネットワークには、個人にプラスの影響を与えるものと、マイナスの影響を与えるものの双方がある。社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
ネットワークって何ですかね?
これ、昨今あまりに日常的に使われ過ぎているので、改めて何かなんて聞かれると答えに窮する人が多いかもしれません。
だったら、過去問から学んでみましょう。ただ、「ネットワーク」単独で、その定義を問う問題は出題されていません。ただし、かつて「ネットワーキング」について、その定義について、単独問題で問われていますので、そちらをまず参照してみましょう。
参照 ネットワーキング
第29回問題113 ネットワーキングに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 静態的な概念である。⇔動態的な
2 既存の所属や地域の制約の中で展開する。⇔制約を超えて
3 特定の強力なリーダーに導かれる。⇔メンバーの合意で
4 日常的な結び付きを無意図的に繰り返し使用する。⇔意図的に
⑤ 目標と価値を共有する。
これを見る限り、ネットワーキングとは
「動態的で、地域の制約を超えて、メンバーの合意で、日常的な結びつきを意図的に使用しながら、目標と価値を共有する」、そんな営み(~イング)だと言えるでしょう。
そのような営みの結果としてある(=状態)のがネットワーク、そう考えればいいと思います。
選択肢1 ×
「クライエントを取り巻く人間関係や社会環境における資源のネットワーク」なんて言われて、すげぇ動いてる感じ、動的なイメージがこれら表現から感じられればいいですかね。
すると、ジェノグラムなんて、家系図みたいな静的なものじゃなくて、もちろん、これはエコマップの説明ですよ。
選択肢2 ×
上述の第29回の過去問で見たように、ネットワーキングは「特定の強力なリーダーに導かれる」んじゃないんですから、メンバーの合意によってじっくり進めていくんですよ。すると、見守りにしろ、ネットワークが「専門職を中心に構成」なわけがないんです。
選択肢3 ×に近い△
たぶん、ラウンドテーブルって知らない人、聞いたことぐらいはあるんだけど・・・って人もいるかもしれません。だから、△にはしておきましたが、先の「ネットワーキング」を踏まえれば、×っぽい△ぐらいの判断はできます。というのも、選択肢2同様に、ネットワークと言いながら、リーダー中心でリーダーだけ集まる、みたいな発想はやっぱりおかしいんですよ。
ラウンドテーブルとは、いろんな立場の人なんかが集まって、立場なんか気にせず自由に意見交換をするってことです。
選択肢4 ×
過去問で、ネットワーキングの特徴として「動的で、制約を超えて、意図的に」なんてことを確認しました。じゃあ、「多職種ネットワーク」ってときはどうですか。みなに「同じ役割を担う」ように仕向けるって、これ、動的ですか?制約を超えてますか?しかも「多職種」なんてネットワークの頭につけてるのに。ありえませんね。
クライエントのニーズを測りつつも、それぞれがそれぞれの役割を果たし、動的でありつつも、そこに秩序ができ、クライエントのニーズが充足されるような、そんなものを多職種ネットワークっていうんでしょ。
選択肢5 〇
この手の、選択肢、つまり、ソーシャルワークの方法論のデメリットも含めて理解しようっていう選択肢が〇になることって少なくありません。こういった方法論を万能と捉えるのではなく、そのデメリットも理解してほしい、と国家試験は言ってるわけです。
ネットワークには、個人にプラスの影響を与える場合と、マイナスの影響を与える場合と、両方あり得るんだってことを意識しつつ、ネットワークが社会資源になりメリットとなっていくような働きかけをしていくことが大事だって、そういうことになるわけです。
ネットワークのまとめとしても、いいまとめで、選択肢5に問題作成者は丸をつけさせたがっているように見えませんか?
正解 5