問題48 厚生労働省が発表した「市町村地域福祉計画策定状況等調査結果(平成31年4月1日時点)」に示された「地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項」として、次の中で最も多くの計画に位置づけられている事項はどれか、正しいものを1つ選びなさい。
1 居住に課題を抱える者への横断的な支援の在り方
2 地域住民等が集う拠点の整備や既存施設等の活用
3 自殺対策の効果的な展開も視野に入れた支援の在り方
4 保健医療、福祉等の支援を必要とする犯罪をした者等への社会復帰支援の在り方
5 地域づくりにおける官民協働の促進や地域福祉への関心の喚起も視野に入れた寄附や共同募金等の取組の推進
(注) 「地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項」とは、社会福祉法第107条第1項第1号に掲げられている事項のことである。社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
さて、「福祉行財政と福祉計画」の最後の問題ですね。そして、知識ではなく論理的思考によって正解を導くことが求められる、典型的な問題になっています。
実際に第33回を受験をした人でも、「何となく」で正解を導けた人が多かった問題なのではないか、と思います。ただ、こういう問題で正解を導ける人は、「正解を導けたからそれでいいや」で納得するのではなく、なぜその選択肢に〇をつけたか、それを別の選択肢に〇をつけて間違えた人に伝わるように丁寧に論理だてて説明できるかどうか、そこですね。もっというと、別にそんな人が具体的にいなくてもよくて、易しい問題ほどなぜそれが正解なのかを自分自身で納得するまで説明する、そんな訓練をすると、全体の点数は勝手に伸びていきます。
さて、この問題ですが、この調査結果を見たことがない人にとっては、確実に×をつけられる選択肢は1つもありません。ただ、×に近い△を指摘することはできるでしょう。
こういう問題ほど、「×」と「×に近い△」を分け、「〇」と「〇に近い△」は意識して分けたほうがいいです。なぜなら「×」とつけてしまうと、時間が残って見直しをするときに、×にしてしまった選択肢については思考停止してしまうからです。100%×のものと、そうではないが×っぽいは、しっかり書き分けることが、残った短い時間の有効活用に影響します。
そのうえで、この5つの選択肢に、×に近い△や、〇に近い△をつけるためには、どこに目をつければいいでしょうか。
ポイントは二つあります。
①市町村地域福祉計画の特徴
厚生労働省のHPに地域福祉計画について、短く、ポイントを絞ってまとめているサイトがありました。そこ踏まえて確認しましょうか。以下のものぐらいを知っておけば十分です。
〇2000年(平成12年)社会福祉事業法等の改正→社会福祉法
・新たに規定された事項=「地域福祉計画」
→①市町村地域福祉計画②都道府県地域福祉支援計画
・「地域福祉推進の主体である地域住民等の参加を得て、地域生活課題を明らかにするとともに、その解決のために必要となる施策の内容や量、体制等について、庁内関係部局はもとより、多様な関係機関や専門職も含めて協議の上、目標を設定し、計画的に整備していく」
〇2018年(平成30年)社会福祉法(昭和26年法律第45号)の一部改正
・地域福祉計画の策定は「任意」→「努力義務」へ
・「地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉の各分野における共通的な事項」を記載する、いわゆる「上位計画」として位置付け
②問題文の「次の中で最も多くの計画に位置づけられている」という表現
上述の記述を踏まえると、市町村地域福祉計画は、おおよそ市町村の数ぐらいにあるわけです。(努力義務だから同じだけの数とはならないでしょうけれども。)
そのうえで、「多くの計画」ということは、計画の数で聞いているわけです。その数え方とは、例えば、横浜市の計画も1つ、〇×県◇△村の計画も1つ、として数えていくことになる、ということはわかりますか?
すると、日本の市町村や都道府県という数としては、都心よりも田舎がたーくさんあるんです。
そこがわかっていれば、
選択肢3 自殺対策
選択肢4 犯罪をした者等への社会復帰支援
選択肢5 寄附や共同募金等の取組
どれも具体的に過ぎるもので、かつ、都心ならどれも課題になるだろうけど・・・みたいなものばかりなんです。
それに対して、
これはどこにでも当てはまりそうな課題であり、かつ既存施設の活用なんかは都心だろうが田舎だろうが同様に考えてるであろうなぁ~って思えるでしょう。
すると、これらの中で、市町村地域福祉福祉計画のなかで数として一番多そうになるのは、どう考えても選択肢2しかありえないのです。
正解 2