問題46 「令和2年版地方財政白書」(総務省)における地方財政の状況(普通会計)に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県及び市町村の歳入純計決算額では、地方交付税の割合が最も大きい。
2 都道府県の目的別歳出では、土木費の割合が最も大きい。
3 市町村の目的別歳出では、民生費の割合が最も大きい。
4 都道府県の性質別歳出では、公債費の割合が最も大きい。
5 市町村の性質別歳出では、補助費等の割合が最も大きい。社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
さて、先の3問が「福祉『行』『財』政と福祉『計画』」でいうところの「福祉行政」に関する問題だったわけですが、ここからは「福祉財政」にかかわる問題になります。
さて、この科目の特徴を押さえたところで、問題46に戻ると。
「福祉財政」では、「地方財政白書」による地方財政の状況が頻出ですね。前回第32回も出題されています。二回連続だとしたら、もうしっかり押さえておかなくちゃだめですね。
参考 第32回問題44 「平成31年版地方財政白書」(総務省)における民生費に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体の目的別歳出純計決算額のうち、民生費は教育費に次いで多い。
2 都道府県の目的別歳出では、生活保護費の割合が最も高い。
3 都道府県の性質別歳出では、扶助費の割合が最も高い。
④ 市町村の目的別歳出では、児童福祉費の割合が最も高い。
5 市町村の性質別歳出では、人件費の割合が最も高い。
この第32回の問題は、選択肢4が正解です。児童福祉関係は、児童手当の費用がけっこうな割合になるので。詳しくは、第32回の過去問の解説をする機会にゆずるとして。
この「福祉財政」については、それぞれ1位になる理由が必ずあります。その理由を込みで押さえれば、そう難しいことは聞いてきません。
選択肢1 ×
「歳入純計決算額」なる用語が出てきました。こういった行政で使われる用語にも意味があります。ただ、日本語は書き言葉上では、接続詞を抜いて、漢字をただただ羅列して用語にしちゃったほうが便利なのでそうしているだけなのです。だから意味が取れないときには意味の区切りごとに分けて、併せて考えるというスタンスに立ち戻りましょう。
「歳入」とは? 入ってくるお金です。
「純計」とは? 重複した部分を差し引くということです。
「決算」とは? お金の最終的な勘定です。要は結局いくらになったのかということ。
ですから、選択肢1で書かれているのは、
「都道府県と市町村で、重複した部分を差し引いて、合わせて結局のところ入ってきたお金で一番デカい額なのは、地方交付税だ」
っていうことです。
これに〇×をつけるには、地方交付税ってどんな税金かも知らないといけません。
地方交付税とは、「都道府県や市町村それぞれによる財政の不均衡を是正する」という名目で、国から地方に配られるお金です。もし、これが地方のお金で一番多いお金だってことになると、地方は国べったりってことになりかねないじゃないですか。国への忖度ありきってことになりますよ。
確かに、先にも上げたように市町村という基礎自治体は、自治体として小さい分、お金にも苦労してます。だから、この地方交付税によって地方の社会福祉が回っているってところも否めません。だから、社会福祉士国家試験でも取り上げられるわけです。ですが、しかし、だからといって、国から渡されるお金で、地方の財源が成り立っているんだっていったら、地域の自立とか語られている今日ではなんかおかしいって思いませんか。
ということで、実際のところは、地方税という地方独自の税収入が約4割を占め、地方交付税は約16パーセントぐらいのようですね。そんなもんです。
ただ、とはいえ、この話は地方のすべての財源(お金)を含めての話であり、社会福祉って部門は地方交付税が頼みの綱になっている地方がたくさんあるのです。全体から見ると、たかが16%と見える人がいるかもしれませんが、そうではなく、社会福祉という観点からすると大きな大きなお金なんです。とはいえ、地方財源の1位とまではいかないよね、というそれだけの問題です。
選択肢2 × 選択肢3 〇 選択肢4 × 選択肢5 ×
ここから以下の選択肢で問われているのは、目的別歳出と性質別歳出です。これらも意味の区切りで分けて考えてみましょう。
歳出とは? 選択肢1の「歳入」の反対ですから、出ていくお金のことです。
目的別とは?「性質別」とは違うんだなってことは、問題の選択肢からわかりますね。それ以外に、選択肢にヒントはありませんか?選択肢には具体例が書いてありますね。
つまり、出ていくお金の目的ごとに分けるってことで、例えば、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消 防費、教育費ぐらいが何となく思い浮かべばいいですかね。
つまり、出ていくお金の性質で分けるってことで、例えば、人件費、物件費、維持補修費、扶助費、補助費等、公債費ぐらいが何となく頭に浮かべばいいですかね。
さて、ここから選択肢4つを全部いっしょに整理します。というより、この4つの選択肢で問われていることはしょっちゅう出てくることなので、理屈もセットで理解して、この機会に覚えてしまいましょう。
都道府県の性質別歳出:人件費費の割合が最も大きい ※小中学校の教員の人件費
都道府県の歳出で、目的別にしても性質別にしても、義務教育課程の公立の小中学校の先生って都道府県単位で雇ってるじゃないですか。採用試験とか都道府県単位でやってること知っていればしっくりくるかと思うですけど。だから、市立とかの小学校の先生でも、その先生の給料って都道府県もちで、すべての公立の小中学校の先生の数を考えても膨大でしょ。だとすると、目的としての教育費にしても、性質としての人件費にしても、都道府県の歳出のトップになっちゃうんです。
市町村の性質別歳出では、扶助費等の割合が最も大きい ※児童手当や生活保護関係費用