問題44 次のうち、都道府県が設置しなければならないと法律に規定されている行政機関として、正しいものを1つ選びなさい。
1 発達障害者支援センター
2 基幹相談支援センター
3 地域包括支援センター
4 精神保健福祉センター
5 母子健康包括支援センター社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
問題43では、義務として支払われる「負担金」と予算の範囲内で裁量により支払われる「負担金」をしっかり分けて押さえることを国家試験は求めていました。
この問題44では、義務として都道府県が設置しなければならない機関が問われているということで、問題43とほぼ連動している問題と言えます。
考え方も同じで、問題43は、制度趣旨から考えて、義務として国に支払ってもらわないと困るよな、おかしいよな、というところから答えが導けたように、問題44も、制度趣旨から考えて、都道府県に義務としてやってもらわないと困るよな、というところから答えが導けるはずなのです。
そんなところを踏まえ、「はい、法の規定ではこれが答えです!」式で、丸暗記を求めるような解説ではなく、なぜそれが答えなのか、そこから国家試験は何を伝えようとしているのか、そんなところを意識して解説してみましょう。
まず、それぞれのセンターの根拠法を挙げられますか。ここ大事なところですよ。
2 基幹相談支援センター:障害者総合支援法
3 地域包括支援センター:介護保険法
4 精神保健福祉センター:精神保健福祉法
5 母子健康包括支援センター:母子保健法
選択肢5 ×
第32回問題139 母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)の業務に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
② 妊娠・出産・子育てに関する妊産婦等からの相談に応ずるとともに、必要に応じ、支援プランを策定する。
このように他科目(「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」)ではありますが、2016年(平成28年)の母子保健法改正により法定化された「母子健康包括支援センター」の業務に関する問題が、今やっている第33回の直前の、第32回の問題でもろに出ています。ですから、このセンターが、たとえ社会福祉関係の機関でなくても知ってなきゃダメなのです。(「過去問3年分は徹底的にやるべし」の法則!!)
これ、ちゃんと過去問で押さえていた人は、このセンターが市町村レベルの機関だということは知っているはずです。知らなかった人は、このセンターの名前を見て、「市町村レベルの機関っぽいな」ぐらいには思って欲しいんです。なぜでしょうか?それは「包括」という言葉が入っているからです。なぜ「包括」という言葉が入ると市町村というイメージが出てくるのでしょうか。
〇市町村の役割:「包括的」な支援体制を具体的に作る
※とはいえ、市町村ではやりきれないところ生じる
↓そこで
〇都道府県の役割:市町村でやりきれないところを「広域的」「専門的」な観点で具体的にフォローフォロー
このような役割分担があるので、「地域包括支援センター」等含め、今日の社会福祉の文脈では、「包括」って言葉が行政用語で出てきやすいのは、ほぼほぼ市町村レベルのものだっていうことは知っておいた方がいいです。
選択肢4 〇
これ、措置だの契約だの、そのあたりの変遷がしっかりわかっていると、明確な規定なんか忘れていても、「精神保健福祉センター」だな、って当たりをつけられるんです。その辺の感覚を説明してみましょう。
まずざっと見て、選択肢1~3の法律は「措置中心から契約中心へ移行した2000年以後にできた社会福祉の法律だな」というのはわかると思います。
施行年で5つを並べてみますか?
〇措置中心の時代
(1966年 母子保健法)
1995年 精神保健福祉法
1990年代後半:社会福祉基礎構造改革
〇契約中心の時代
2000年 介護保険法
2005年 発達障害者支援法
2006年 障害者自立支援法(現:障害者総合支援法)
〇身体障害者手帳
身体障害者更生相談所:根拠法は身体障害者福祉法
〇療育手帳
知的障害者更生相談所:根拠法は知的障害者福祉法
〇精神障害者保健福祉法
精神保健福祉センター:根拠法は精神保健福祉法
選択肢1 ×
このように障害関係では、障害種別ごとに都道府県には必置の機関があると知るや、「じゃあ、発達障害者支援センターだって、発達障害者に障害者手帳を発行するために、都道府県に機関が必要じゃないか」と思う人がいるかもしれません。
しかし、まず、発達障害者単独の手帳制度はないことは、必ず知っておかなければなりません。手帳は、身体/知的/精神の、先の三つの法律に対応した障害者手帳3つ(=身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)しかありません。
じゃあ、発達障害者支援センターって何なの?と思われるかも知れませんね。そもそも、発達障害独自の手帳制度がない以上、実は、発達障害者のみが使えるような独自の制度やサービスはないのです。
障害者手帳とはそもそも「障害者が持っている」のではなく、「上述の三つの法に載っている制度を使える資格所持者が持っている」のです。だから、障害者手帳がなければ障害者制度もないのです。これが措置中心の時代の障害者福祉の根本的な考え方です。
一方で、発達障害者支援法が対象とする発達障害者とはどういう人でしょうか。障害者手帳を持っている人のような明確な線引きはできません。それよりもそのような線引きにうまくはまらないのだが、でも生き辛さを抱える人です。だとすると、そんな発達障害者を支援していくためにできた発達障害者支援法では、手帳を作るという発想は出てこないんです。
じゃあ、発達障害者支援法に規定された発達障害者支援センターって何をするところなの?相談や研修や、ネットワーク作りに特化したところ、と言っていいでしょう。そんな発達障害者支援センターは、都道府県の任意設置であり、さらにいうと、そのネットワーク作りに適した民間団体があるなら、民間に委託することもできます。
これは、措置という形での制度を前提とした、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センターには絶対にありえない発想です。この三つは当然、都道府県自らがやる必置の機関です。
〇都道府県に必置(都道府県自らがやる)
身体障害者更生相談所:前提に身体障害者手帳制度
知的障害者更生相談所:前提に療育手帳制度
精神保健福祉センター:前提に精神障害者保健福祉手帳制度
〇都道府県に任意(民間に委託も可能)
発達障害者支援センター:手帳制度なし※ネットワーク構築が目的