ソーシャルワークから見た「心臓と血管の構造と機能」

01人体の構造と機能及び疾病
今回のポイント
「構造」と「機能」という用語のニュアンスを知る
心臓と血管に関わる最低限のキーワードを押さえる

問題2 心臓と血管の構造と機能に関する次の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。
1 肺と右心房をつなぐのは,肺静脈である。
2 左心房と左心室の間には,大動脈弁がある。
3 血液は,左心室から大動脈へと流れる。
4 上大静脈と下大静脈は,左心房に開口する。
5 血液は,大動脈から肺に流れる。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より

こういう問題を見て

「ソーシャルワーカーがなぜこんなことまで覚えなきゃいけないの?」

という人がいます。

ただ、そういう見方をしていてはいつまでたっても暗記することは増えるだけですよ。
もったいない。

逆に考えてみましょう。

つまり、国家試験問題作成者、つまりソーシャルワークの第一人者たちが「ソーシャルワーカーになるならこれぐらいは知っておいてほしい」と国家試験の問題を通して伝えているのだ、というふうに考えてみましょう。
そういう視点で国家試験を眺めてみると、ソーシャルワークの視点がだんだんわかってきて、結果として、心臓や血管について、医療者のように何でもかんでも知れ、といっているのではないことがわかってきます。

すると、「問題作成者はなぜソーシャルワーカーにはこれを知っておいてほしいと考えるんだろう?」という観点から、教科書を眺めるようになります。それがわかってくると、教科書を読んでもどこが大事なのか(=国家試験でどこが問われやすいか)もおのずと見えてきて、メリハリをつけた試験勉強ができるようになるんです。

周り道のように見えますが、このように国家試験からソーシャルワークの見方・考え方を教えてもらいつつ、暗記する量を減らしていけば、社会福祉士国家試験の見え方も変わってくるはずなのです。

この問題は「心臓と血管」について重箱の隅をつつくような些末なコトを聞いているのではありません。「心臓と血管の『構造と機能』」について聞いています。
「構造」と「機能」とは、私たちソーシャルワーカーが社会を変えるべきものとして眼差し、それを感情的にではなく、論理的に考える際に重要な概念です。

「構造」のニュアンス ⇔「変動」
→全体のなかで変わらないもの(=変わりにくいもの)のことを指す
「機能」のニュアンス
全体を維持するための部分の役割

この科目名にある「人体」(=身体)を「全体」としてみたとき、そこには変わらない構造がある構造があるから身体は〈健康〉という状態を維持できる。そして、そのような人体の構造は心臓や血管という「部分」が適切にはたらけば維持される

医学という自然科学ではそのように考える(=見る)のです。

そのような形で〈健康〉が達成されている人は、そうではないとされる人に比べて、今の社会においては相対的に生きやすい(=生きづらさを感じにくい)、というわけです。
もちろん、「健康な人でも生きづらいよ」と思うかもしれませんが(だから「相対的に」と言ったのですが)、〈健康〉が何を意味するのか、そこも大事なところです。※もちろん、これも国家試験で問われやすい大事なテーマです。

とりあえず、人体という全体を維持するにあたり、心臓と血管という部分が果たす役割は、医学的には他の部分よりも重要なとされるので、心臓と血管の構造と機能はよく出題されます。今回の問題で選択肢として出たところぐらいは押さえておきたいところです。(とはいえ、この設問は、心房と心室といった心臓内部の話までしていて、例年よりちょっと細かいところまで問題として突いてきてるな、とは思いますが。)

まず大前提として

心臓と血管のキーワード
動脈=心臓から押し出された血液が通る道路
静脈=心臓へ戻る血液が通る道路
=酸素を取り込む場
心臓=血液を道路に押し出すポンプ

と押さえたうえで、
 肺(酸素を取り込む場)→肺動脈(酸素たっぷりで心臓へ戻る)→心臓(血液を押し出す)【左心房→左心室】→大動脈(酸素たっぷりで全身へ)→全身(酸素使う)→大静脈(酸素足りず心臓へ戻る)→心臓(血液押し出す)【右心房→右心室】→肺静脈(酸素足りず肺へ行く)→肺(酸素を取り込む場)→肺動脈脈・・・・・ループする

これが最低限。そして、これさえ押さえておけば、実は選択肢1と選択肢5を×にできると同時に、選択肢3を一発で〇にできます。

選択肢1 ×

そもそも肺と右心房は繋がっていない。肺静脈が繋いでいるのは、肺と左心房ですね。

選択肢5×

血液は、大動脈から全身に流れる。

なので、選択肢2と選択肢4は△にしても、選択肢3正解にはたどり着けるはずです。

まずは上述のループをしっかり押さえたうえで、余裕があるなら、大動脈弁や上大静脈/下大静脈について調べてもいいでしょうね。(血液の逆流を防ぐ大動脈弁が、心臓から全身に血液が出るところ、つまり、左心室→全身の間にあること、ぐらいは知っておいてもいいですかね。このループが逆流しては、構造の維持が台無しになることから、逆流を防ぐこの弁は大事なんです。)

正解 3

タイトルとURLをコピーしました