・国民年金という制度の基本的な考え方を知る
・免除や猶予の条件をしっかり押さえる
問題55 国民年金に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 国民年金の第一号被保険者の保険料は、前年の所得に比例して決定される。
2 障害基礎年金を受給していると、国民年金の保険料納付は免除される。
3 学生納付特例制度の適用を受けた期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。
4 自営業者の配偶者であって無業の者は、国民年金の第三号被保険者となる。
5 障害基礎年金には、配偶者の加算がある。社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説
第33回の「社会保障」の最後の問題です。
「国民年金とは?」と問われたらなんと応えますか?ソーシャルワーカーである以上、制度としての国民年金を応えたいですね。しかも、これらは法律に基づいた制度であるのですから、国民年金法という法律がある以上、国民年金法の第一条ぐらいちょっとみておきますか。
国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。
この第1条に出てくる日本国憲法第25条はわかりますか?第1項も第2項も、すらすら出てきてほしいところです。なぜなら、日本国憲法の第25条条文が社会保障と社会福祉の制度上の根拠だからです。
「老齢、障害又は死亡によつて」というところが、それぞれ、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金に対応することは大丈夫ですね。〇〇基礎年金は知っていても国民年金というと???という表情をする人がいますが、これら〇〇基礎年金全てまとめて、国民年金制度というわけです。
あとは「国民の共同連帯によつて防止」も大事です。予防という発想が前提であり、それを「共同連帯」によって支える。これ、社会保険の考え方ですね。つまり、国民年金制度は、社会保険のひとつだということです。
さて、これぐらいを押さえた上で、選択肢を1つ1つ見てきましょう。
選択肢1 ×
これはすぐ×つけたいところです。
実は同じことを、前回の第32回の「社会保障」の問題でも聞いているんです。
問題55 事例を読んで、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Fさん(65歳、女性)は、22歳からアパレル関係の大企業で正社員として働き、厚生年金にも加入していた。その後会社員の夫と結婚し、35歳の時に退職して専業主婦になった。48歳の時に個人事業主として手芸店を開き、現在ではかなりの事業収入を得ている。
4 Fさんは、事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。
ということは、過去問3年分は確実にしあげたいので、2年連続で出た以上、この選択肢は即×にできなきゃだめなのです。
これは基本中の基本。もし、ここが分かってないとしたら、教科書なり丁寧に読みましょう。ここは、国民年金制度の入り口みたいなところになります。
じゃあ、第2号被保険者の保険料はどうですか?全国一律で定額ですか?第2号被保険者は、厚生年金保険を払っているので、国民年金という体では保険料は払いません。
じゃあ、せっかくだ、第3号被保険者はどうですか? 第3号は第2号被保険者の配偶者で、個人では保険料は納めません。なぜなら、配偶者が加入している年金制度が負担するということになっているからです。
ですので、「国民年金第1号被保険者の保険料」という名目でお金を払っているのは第1号被保険者のみです。
選択肢2 〇
これも即〇をつけたい、それぐらいの選択肢ですかね。法定免除といわれるものです。
以下の国民年金1号非保険者が届け出た場合、保険料が自動的に免除
① 障害基礎年金または厚生年金の障害年金(1級または2級)を受けている
② 生活保護の生活扶助を受けている
③ 厚生労働省令で定める施設に入所している
選択肢3 ×
これは第1号非保険者の保険料猶予の制度についての選択肢ですね。
① 学生納付特例制度 ② 納付猶予制度
条件 学生本人の前年度所得が一定額以下の場合(※社会人学生は除くってことです)
→申請により、在学中の保険料の納付が猶予
<メリット>
猶予期間は、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の猶予期間の受給資格期間には参入
<デメリット>
保険料を追納しない限り、猶予期間は老齢基礎年金の支給額には反映されない
デメリットの「支給額への反映」は、老齢基礎年金のみになってますね。障害基礎年金や遺族基礎年金はどうですか? この二つの基礎年金は定額なので、支給額への反映という発想はありえないです。
選択肢4 ×
この選択肢は「自営業者の配偶者であって無業の者」に焦点化しちゃダメで、「国民年金の第三号被保険者」から攻めていったほうがいいですかね。
なぜなら、「国民年金の第3号被保険者」は定義が明確だからです。そこから判断すればいいわけです。
① 第2号非保険者の被扶養配偶者
② 20歳以上60歳未満(=国民年金の保険者共通)
すると、自営業者は第1号被保険者ですから、①に合いません。だから×ということになります。
選択肢5 ×
基礎年金部分というのは、財源もそれほど豊かではありませんね。すると、基礎年金部分の発想は、最低限を支えるという制度設計にならざるを得ないんです。すると、子は大きくなるまで保護者が育てる義務があるので、子の加算は必要だとしても、配偶者加算まで基礎年金で、というとちょっと財源的に苦しいんです。
すると、配偶者加算のある年金制度ありえないでしょうか?ありますよ。それが財源が基礎年金部分よりは余裕のある厚生年金であり、障害年金制度でも障害厚生年金には配偶者の加算があります。
正解 2