ソーシャルワークから見た「日本におけるがん(悪性新生物)」

01人体の構造と機能及び疾病
今回のポイント
日本における死因を整理し押さえる
「予防」概念について最低限のキーワードを押さえる

問題4 日本におけるがん(悪性新生物)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 近年において,がんは死因の第2位となっている。
2 がんと食生活は関係がない。
3 早期発見を目的とするがん検診は,がんの一次予防である。
4 近年の傾向として,胃がんの「死亡率」は低下している。
5 がんの治療は,手術療法に限られる。
(注)「死亡率」とは,年齢構成を基準人口で調整した「年齢調整死亡率」を指す。

社会福祉士国家試験 第33回(2021年)より解説

日本における「がん」(悪性新生物)の死亡率は、1980年前後に脳血管疾患を抜いて以後、ダントツでトップの状況を維持しています。それゆえ、「がん=死の病」という、かつてあったイメージですがら、今日の医学的にはそのイメージは大きく変わりつつあります。ただ、それでも、今でも、一般市民に「がん=死の病」というイメージは植え付けられています。そうであるがゆえに、市民のそのイメージを、誤解とただ切るのではなく、ソーシャルワーカーとして、「がん」の今の現状について客観的指標に基づき知っておき、必要に応じて一般市民に伝えていくことが重要です。

それゆえに、社会福祉士の国家試験でも出題されるわけです。とはいえ、私たちは医療者(=スペシャリスト)として「がん」に関わるわけではないので、最低限でいいので、知識として押さえておきたいところです。

選択肢1 ×

死因で、「がん」(悪性新生物)はダントツです。次に、心疾患が来ます。この1位2位は当分ゆるがないでしょう。3位が、「老衰」「脳血管疾患」「肺炎」、この3つがここ1〜2年並んでいます。すると、ついつい、この3位をデータで調べて「覚えろ」という人がいますが、正直、死因というのは見方によって変わるところもあるため、3位のこの三つのデータ上の差異は、統計上は有意な差異とまではいえないものだと私は思います。すると、国家試験では3位がデータ上どれか、などという問題は出しにくいものです。

よって、死亡率については、1位がん、2位が心疾患、3位が「老衰」「脳血管疾患」「肺炎」で並んでいる、ぐらいの知識で十分だと思います。この知識だけで、選択肢1は即×にしたいところです。

選択肢2 × 選択肢3 ×

この二つの選択肢は、選択肢1の傾向(=がんの死亡率が高い)を踏まえて、予防という観点について問われています。これ、問題3から論理的に引き継がれていることがわかりますか。

がんの死亡率が高いのは、喫煙や過労、栄養など生活習慣と関係がある「生活習慣病」によるからです。だから、問題3選択肢3でも問われています。がんも含めた「生活習慣病」対策として健康増進法で予防という観点をより強化した政策を日本でおこなっているわけです。

では、そこでいう予防とは何ですか?

問題3でも解説しましたが、生活を改善する1次予防と、早期発見する2次予防、この違いぐらい絶対に覚えておかなければなりません。もちろん、早期発見を目的とするがん検診は2次予防です。

選択肢4 〇

がんに関する予防という観点を健康増進法等で取り上げた結果、どうなっているのでしょうか?選択肢1、2、3と見てきたら、その結果が知りたくなりますよね。それが論理的な読みというものです。国家試験はそれに選択肢4で応えているわけです。

実は、胃がんになる人は増加していますが、完治する人が多いため、死亡する人はあまり増加していません。つまり死亡率は減っているのです。

この結果から、日本における胃がん早期発見・早期治療の進歩によるんだ、という強い推測ができるでしょう。国家としては、予防という政策をして、結果が出てるのですから、みんなに自慢して言いたいじゃないですか。笑 胃がんはその象徴です。ということで覚えておきましょう。

選択肢5 ×

「~に限られる」といった表現をする選択肢は×だ、なんていう人がいますが、正直そういう考え方はおすすめしません。一か八かの試験なら、そういう傾向にかけてもいいですが、社会福祉士はソーシャルワークの見方・考え方さえわかっていれば確実に取れる資格です。だったら、こういう表現がでてきたら×だとかそんなものは一切排除して、国家試験にしっかり向き合い、国家試験に丁寧に応答しましょう。そうすれば勝手に合格点に到達するものです。

さて、選択肢4で、早期発見によって胃がんの死亡率が下がっていることを知った、そんな私たちにとっては、「がんの治療は手術だけ」なんて選択肢はあやしいことは論理的に考えればすぐわかります。早期に発見しても、手術しか施しようがないのであれば、死亡率がそれほど下がりはしません。手術(=外科治療)以外にも、薬物療法、放射線治療、集学的治療、造血幹細胞移植、免疫療法など様々な選択肢がふえたことによって、死亡率がさがっているんだよって、国家試験の問題の構成が言っているようなものじゃないです。ということで、この選択肢も×。

正解 4

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