ソーシャルワークから見た「思春期・青年期における心身の特徴」

001医学概論
今回のポイント
・社会福祉士国家試験の第一問目の意義について確認する。※本質は書き出しに宿る!
・ソーシャルワークは思春期・青年期をどのように眼差すのか、その根拠も含め、検討する。

問題1 思春期・青年期における心身の特徴に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 思春期には,男女ともに緩やかな身体の変化がみられる。
2 思春期における心理的特徴としては,自意識過剰がある。
3 思春期には,アイデンティティは形成されている。
4 第二次性徴に性差はみられない。
5 青年期の死亡原因としては心疾患が最も多い。

社会福祉士国家試験 第37回(2025年)より解説

社会福祉士国家試験なるものに、なんだかんだ向き合って、おそらく10数年になります。
どの程度向き合っているか。
まぁ、この業界、広いようですが、私以上に社会福祉士国家試験に真剣に向き合っている、そんな人はそうそういないんじゃないか、と自負する程度には、ぐらいにしておきましょうか。
そんな私には持論があります。

「社会福祉士国家試験の過去問はすべてが良問である」

勤務する学校の学生には常日頃から言ってます。だから、それら学生からすると「またでたよぉ」と言われそうなところですが。

さて。
第37回の社会福祉士国家試験は、新カリキュラムへの移行後の初の試験であったことなどから、過去問3年分をただただ丸暗記して何とかしようとした、そんな受験生からはかなり評判が悪いようです。そして、私の講義を受講する学生にも今回の試験に対して文句を言いたい学生はいる「かも」しれませんが。そんな方々からすると、今回の国家試験を終えてもなお、上のような持論を唱える、そんな私に当たりたくなることでしょう。
「『今回の国家試験は良問だ』っていうけど、おまえが言うことは、結局のところ、そればっかりじゃないか。そんなの、何の具体性もないよ」
なーんて。

ということで。久しぶりのこのページの更新。かつ、今までの流れを変えて、第37回というまだ正答すら出ていない中での解説ですから、挨拶がてら、今回の国家試験が良問だという根拠を具体的に提示してみましょう。

その前にちょっと横道に逸れていいですか。

社会福祉士になるためには、カリキュラムにおいて実習をしなければいけません。新カリキュラムからは240時間が必須になっています。社会福祉士になるための大きな関門です。そんな実習は、実習施設の担当者に実習生の紹介票を送ること、ここから始まります。実習施設の担当者にとってあなたを知る初めての情報、初めてのコンタクト、だから大事なんだ、なんてことを、実習指導の最初の段階で、私はかなり強調して伝えます。
その延長で、実習生紹介票に限らず、どんな文章でもその最初の一文っていうのはとても大事なんだってことも伝えます。なぜなら、今日のような情報化社会では、最初の一文によってその文章を読み続けるかどうか、相手に決められてしまうから。だからこそ、ソーシャルワーカーに限らず、これからの共生社会を生きる者は、最初の一文で、自分を指し示しつつ、相手を引き付けるような、そういう工夫をしなきゃいけません。
逆にいうと、最初の一文、最初の入り口でいい文章かどうかは決まるし、いい文章であれば必ず、最初の一文で勝負してるんだ、なんてことを学生には伝えています。

さて、ここで、社会福祉士国家試験も一つの作品と見てみましょう。『社会福祉士国家試験』という作品は、どういう作品ですか。
受験者に、ソーシャルワークとはいかなるものかを、129の文章(=問題)をもって伝える、そういう作品です。

そんな観点から、第37回社会福祉士国家試験が良問だと私が思う根拠を、最初の文章(=第1問)から提示してみたいと思います。ということで、第1問、解いてみてください。

おそらくネット上や紙上で出回るであろう多くの解説では、この問題は「かんたんな問題」として処理されることでしょう。つまり、せいぜい各選択肢に1文ぐらいの解説がつけられて、正解2と書いてあっておしまい。そんなもんでしょうねぇ。

じゃあ、私はどうか。
簡単かどうかじゃなく、この作品の第1問目で、ソーシャルワークとは何かをどうやって伝えてくるだろうか、という私のワクワクにどう応えてくれるかどうか、そこだけが私のこの問題への評価軸になります。(第33回の過去問の第1問「ソーシャルワークから見た『人の成長と老化』」もまたそんな観点から解説しています。関心ある人はどうぞ。)

さて、この問題のタイトルは「ソーシャルワークから見た思春期・青年期の心理的特徴」です。

思春期・青年期とは?

発達段階において大人と子どもをつなぐ時期なわけですよね。それぐらいは誰もが知っている。
だとすると、思春期・青年期とは?
揺らがぬアイデンティティをもち(=選択肢3)、揺らがぬ身体的な性差を持ち(=選択肢4)、心臓に過度な負荷がかかっても耐えうる(=選択肢5→高齢になってから心疾患が増える)ような、そんな「大人」になるための時期、それが思春期・青年期だと言えます。だから、選択肢3,4,5は確実に×ってことになるわけです。

この問題は、せいぜい、選択肢1と選択肢2で迷うぐらいでしょうか。選択肢1は、身体の変化が「緩やか」か「急激」か。ただどちらにしろ、選択肢3,4,5とともに、社会的に認められた、そんな大人になるプロセスとしての心理的・身体的特徴としての思春期を選択肢1も描いています。ですから、身体の変化が「緩やか」であれ、「急激」であれ、その「変化」そのものを社会は歓迎します。

一方で、「自意識過剰」(=選択肢2)であることは社会は歓迎しません。

そもそも「過剰」とは何を基準に過剰といっているのでしょうか。
もちろん、「社会」から見て過剰なのです。そして、そんな「社会」は「社会人(=大人)の身体や心理」を「良し」とします。「望ましい大人」の身体、「望ましい大人」の心理が完成される、その途上にある「思春期」ではあるが、時に社会人(=大人)から見て、思春期における心理は、自意識過剰、つまり非社会的に見えるんだっていうのです。

これを知らない大人は、そんな非社会的な在り様を止めようとします。
そして、「自意識過剰」にならない思春期こそが、思春期の「理想的な(=良い)」通り過ぎ方だと思うことでしょう。反抗期なき青年を良しとし、自意識過剰の青年と区別することでしょう。

しかし、ソーシャルワークの見方はそうじゃないのです。
だから、国家試験の最初の問題で、選択肢2に〇をつけさせるのです。意識させるのです。自意識過剰にならないような思春期を良しとしないように、意識してもらうために、選択肢2に〇をつけさせるのです。

なぜですか?

ソーシャルワークは思春期の「自意識過剰」にこそ可能性を見出すからです。
揺らがぬアイデンティティや、決まりきった男女という性差を「良し」とする、そんな「社会」に対して、あらゆる人が生きやすい社会を模索する契機として、思春期特有の「自意識過剰」を良くも悪くもまず焦点化してみよう、というのです。

だから、ソーシャルワーカーになるなら、選択肢2に〇をつけられなきゃダメなんです。

正解 2

なんて解説を、あと128問ですか。
さて、やれるかどうか。

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